ロシアの歴史教科書が伝える史実の光と影

ロシアの歴史教科書が伝える史実の光と影

政府による教科書統制

世界最大の国土面積を有し、多民族からなるロシアは、1991年に誕生した共和制の連邦国家です。それまではソビエト連邦(ソ連)という社会主義の連邦国家の一部でした。ソ連時代には学校の教科書は各学年に1種類しかなく、内容は政府や共産党によって統制されていました。当時の歴史教科書をひも解いてみると、支配層に抑圧されていた人々が立ち上がり、闘ってソ連の歴史を築いてきたという見方が記されています。歴史上の紛争については、民族同士が憎み合わないように、民族間の争いではなく、エリート層に対する農民の争いだったと説明されています。

記憶に刻まれたソ連時代の出来事

現在のロシアの人々にとって、ソ連時代の重要な出来事の1つはソ連領が戦地になった独ソ戦(第二次世界大戦)でした。この戦争ではどの家庭でも戦死者が出たと言われており、連合国側の勝利に自分たちが大きく貢献したという愛国主義を育てるきっかけにもなりました。もう1つは指導者スターリン(1878~1953)による強権政治です。スターリンは、工業化を進めて国民の生活を向上させましたが、他方で農業の集団化によって農民たちを苦しめ、政治的に異を唱える人たちを正式な裁判なしに処罰するなどして抑圧しました。また敵国と通じる可能性があるとみられた国境近くの民族が内陸部に強制移住させられた例もありました。

変化した教科書の内容

現代のロシアの歴史教科書では、このような史実の良い面と悪い面の両面を記述しています。教科書も複数出版され、教える内容も政府ではなく、歴史家や教員が決めています。つまり完全には政府の方針を反映できない仕組みになっているのです。
また、ロシアではスターリン時代に政治的抑圧を受けた犠牲者たちの名誉を回復する法律ができ、犠牲者を追悼する行事も各地で行われています。大きく揺れ動いてきた自国の歴史を、国民はそれぞれに複雑な思いで見つめているのです。

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同志社大学 グローバル地域文化学部 ヨーロッパコース 准教授 立石 洋子 先生

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ロシア史

メッセージ

大学は、答えがなかなか出ないことを考え続ける学びの場です。自分や相手が間違ったことを言ってもいいし、議論して皆で一緒に考えていくところです。だから高校生のうちに「答えがすぐに出ない問題がある」ということを意識しておきましょう。私が研究しているロシアでは、日本に良い印象を持っている人が多いです。アニメソングのコンサートが開かれ、スーパーでおにぎりが売られています。民族も宗教も言語も多様で、ウクライナとの戦争報道では伝えられていない別の顔があります。

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