福祉の質はどう高める? 介護職員の組織づくり、働く環境を考える

コミュニケーションが生む安心
特別養護老人ホームは介護が必要な高齢者のための施設です。介護保険が始まった2000年とくらべて、全国の入居者の平均介護度は大幅に上がっています。このためケアに時間がかかるようになり、職員が利用者とのコミュニケーションを大切にしたいと思っていても十分に時間が取れないという声が挙がっています。雑談を通して相手を知ることは互いの安心につながります。職員同士も、「子育て中で残業ができません」「認知症の人と接するのは得意ですが、大声が苦手です」など、働く上で大切なことを共有できる関係だと一人一人が力を発揮できます。人間関係が良くないと情報共有も滞り、サービスの質が低下します。
安心して介護を行う仕組みづくり
親が子どもを見て「いつもと何か様子が違う」と体調の異変に気づくことがあります。特別養護老人ホームのベテラン職員は、食事量は? 水分量は? お顔は赤くなっていないか? とセンサーを利用者全員に働かせています。このような情報を施設内で共有できていれば、誰もが「おかしいな」と異変に気づきやすくなります。ベテラン職員が何を見て、どう判断しているのかを、言葉や数値といった誰もが理解できる「形式知」の情報に変えてマニュアル化することで、新人の職員でも安心して働ける土台をつくることができます。
福祉の3つのレベル
ソーシャルワークの支援にはミクロ、メゾ、マクロという3つのレベルがあります。ミクロは生活に困難を抱えている個人、メゾは組織や集団、マクロは社会や制度・政策を指しています。ソーシャルワーカーは個人だけでなく、組織や社会にも働きかけを行います。むしろ現代のソーシャルワーカーは社会への働きかけに大きな期待をされています。
福祉の仕事に携わる人が安心して働き、力を発揮するには、チームワークの強化やマニュアルの整備など、メゾレベルのアプローチが重要です。福祉という言葉の語源は「しあわせ」です。ケアを提供する人の福祉も、ケアを必要とする人の福祉と同じだけの価値があるのです。
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先生情報 / 大学情報

周南公立大学 人間健康科学部 福祉学科 教授 小林 武生 先生
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