人は最期に何を願うのか? ―科学と感性で描く、人生の物語への伴走

問われる死生観
高齢者看護では、「死」と向き合う機会が少なからず訪れます。生や死についての考え方を死生観と呼びますが、それがしっかりと構築されている人はどの年代でもそう多くはないはずです。一方で、看護や介護で高齢者の支えになりたいと望む人は、早い時期に死生観について触れる必要があります。特に人生の最終段階(終末期)には、その人がどう「生きたい」あるいは「死にたい」と望んでいるのかを理解し、それぞれが選んだ道を尊重して支えていかなければならないからです。
テキストマイニングで描く「対話の地図」
患者がどのような選択をしたとしても、その人らしく「生ききる」ことが重要だととらえ、終末期の患者ができる限り自分らしく過ごせるような看護の支援や手段を考える研究があります。昨今は、将来の医療やケアについて家族や医療者とあらかじめ話し合う「ACP(人生会議)」という仕組みが普及していますが、そこで語られる価値観は多岐で、たった一つの正解があるわけではありません 。しかし、全国の膨大な論文データをテキストマイニング分析することで、「意思決定支援において何が重要視されているのか」を可視化でき、話し合いのヒントを得ることができます。この「対話の地図(ヒント)」を共有することで、医師、看護師、介護士などの多職種が共通のゴールに向かって連携できるようになります。
看護は「科学」と「感性」で社会を創る
看護は、現場の課題を解決するために新しいケア用品を開発するような「クリエイティビティ(創造性)」にあふれた学問でもあります。最新のテクノロジーを用いて他者の「主観世界」に歩み寄ることも、大切な研究の一つです。他人の人生を完全に理解することは不可能ですが、VRを通じてその「わからなさ」に真摯に歩み寄る姿勢を育む。これこそが、科学(テクノロジー)に看護の「感性」を融合させる意義なのです。科学的な裏付けと豊かな感性を武器に、一人ひとりの「人生の物語」に伴走し、より良い社会をデザインしていくことが可能です。
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周南公立大学 人間健康科学部 看護学科 講師 辻 麻由美 先生
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