風の流れに合わせて高層建築物をデザインする

ビル風はなぜ起きるのか
都市の高い建物の周りを歩いていると、急に強い風が吹くことがあります。これは「ビル風」と呼ばれる現象です。上空を流れていた速い風が高層建築物にぶつかることで向きを変え、地上付近に流れ込んだり、加速したりすることで発生します。強いビル風になると、人を転倒させるなどの危険な力があります。そのため、高層建築物を設計する際には、周囲にどのような風が生じるかを事前に評価することが求められます。評価には、模型を使って風の流れを再現する風洞実験や、コンピュータによるシミュレーションが行われています。
風は「弱ければよい」わけではない
風の研究は、単に強い風を防ぐことだけを目的としているわけではありません。都市ではヒートアイランド現象によって気温が上昇するため、風が弱すぎると熱がこもり、かえって過ごしにくくなってしまいます。そのため、強すぎず弱すぎない「適切な風環境」を整えることが重要なのです。さらに、周りの建物の配置や高さによっても風の流れは大きく変わります。こうした点を踏まえ、風の動きを広い視点でとらえることが、より住みやすく、環境にも配慮した街づくりにつながります。建物単体だけでなく、都市全体を見据えた設計が求められています。
風から建築を考えるアプローチ
こうした風の研究は、日本で高層建築が増え始めた1970年代から進められてきました。現在では、コンピュータ・シミュレーションによって、風の流れをより正確に予測する技術が発展しています。さらに今後は、AIを活用することで、短時間で精度の高い予測が可能になると期待されています。これまでの建築設計では、建物の形を決めた後に風の影響を確認する方法が一般的でした。しかし将来は、風の流れをもとに建物の形そのものを考える、「風に合わせて建築物をデザインする」アプローチが広がると考えられています。見えない風を解き明かし、より安全で快適な都市をつくる研究が進められています。
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