卓球の「見えない戦術」を画像・音響技術で解き明かす

卓球の「見えない戦術」を画像・音響技術で解き明かす

リアルタイムで相手の動きや戦術を分析

多くの競技スポーツでは、試合中の動きや試合内容をリアルタイムに分析し、戦術の立案に活用することが一般的になっています。しかし卓球では、試合映像を録画して、選手は試合後に分析しているのが現状です。卓球のボールは小さく、ラリーも非常に速いため、プレーの詳細をその場で客観的に捉えることが難しいからです。そのため、どのコースにどのような回転で打つかといった戦術の多くは、これまで経験や感覚に頼って語られてきました。

マイクとカメラでボールを「読む」

卓球の戦術を数値化する上で必要な要素として、ボールの落下位置と回転が挙げられます。落下位置の推定には、音響計測のアプローチが取られています。卓球台の周囲に複数のマイクを設置し、バウンド音が各マイクに到達する時間の差を利用して落下位置を割り出す仕組みです。リアルタイムで推定でき、平均約15cmの誤差という、戦術解析には十分な精度が得られています。
回転の推定にはステレオカメラと深層学習を組み合わせた画像解析が用いられています。三次元の飛行軌跡を取得し、重力や空気抵抗を考慮した物理モデルと照合することで、ボールの回転数や回転軸まで推定できるようになっています。現在は、1つの軌跡から回転を算出するのに約30秒かかります。並列処理の導入や高性能プロセッサーの活用で、リアルタイム化がめざされています。

スポーツの見方を変える

データがリアルタイムで使えるようになれば、試合中に状況に応じた戦術を組み立てられるようになります。さらに、プレーの内容が数値として画面に表示されれば、観戦者も試合の駆け引きを理解しやすくなります。例えば、多く打たれているコースや、回転の特徴などが示されることで、試合の流れをより深く読み取ることができます。新たな技術の導入によるこうした変化は、選手の育成や指導のあり方にも影響を与え、スポーツの楽しみ方そのものを広げていく可能性があります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

新潟工科大学 工学部 工学科 電子情報学系 知的計測システム研究室 教授 伊藤 建一 先生

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スポーツ科学、情報通信工学、生体工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校で学ぶ物理や数学は、教科書の中だけの知識に思えるかもしれません。しかし、教科書で学んでいることは、新しい発見や発明と無縁ではありません。卓球の超高速ラリーが生む「見えない回転」を数値化する研究も、そうした基礎的な知識が活用されています。教科書の中の基礎的な公式がAIなどの最新技術と結びついた時、誰も見たことのない新しい技術を生み出す力に変わるのです。あなたの探究心が、卓球という競技の常識を変え、スポーツの未来をつくる原動力になるはずです。

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