移民の子どもたちと新しい文化を育てる イタリアの異文化間教育

送り出す国から、受け入れる国へ
イタリアは深い歴史と豊かな文化のある国です。近年は、国際社会に追いつくべく努力を重ねてきた国でもあります。かつては多くの移民を送り出す側でしたが、経済成長などを経て、1970年代には受け入れ移民数の方が多くなりました。1990年代後半になると、労働の機会や豊かな暮らしを求めてイタリアに移り住んだ人たちが母国から家族を呼び寄せ、移民の子どもが急増しました。こうした人たちと新しい文化を育てていこうと、イタリアでは、欧州でも広く普及した「異文化間教育」に取り組んできました。
ホームって何?
学校の先生と子どもたちが地域の公立図書館に集い、絵本の読み聞かせが始まりました。物語のテーマは旅です。「ホームって何だろう?」という図書館員の問いかけに、子どもたちは自分の経験を振り返りながら、「二度と帰ることができなくても、生まれた国がホーム」「今いるところがホームだと思う」「母国に帰ると、ここが恋しくなるし、どちらも大事」など、少しずつ話し出します。子どもたちの出身地は東欧、アフリカ、アジアなど幅広く、戦争から逃れてきた子どもや、イタリアで生まれた移民二世もいます。移民ではない子どもたちも、一緒に「自分の大事な場所」について振り返りながら、これからの「場所」をどうしていけばよいか考えます。その軌跡は図書館に掲示され、地域の大人たちの目に留まることもあります。
「柔らかな共生」で文化を育む
イタリアは移民政策の後発国ですが、だからこそ見えてくるヨーロッパの事情もあります。異文化間教育は、移民受け入れの先進国であるフランスやドイツが従来の教育政策(「同化」や、移民を一時的な滞在者ととらえた「外国人教育」)の課題を踏まえ、欧州で新たに採用した柔らかな共生のプランでした。移民の経験がある子どももない子どもも、自らの経験を語ることでアイデンティティを確認し、耳を傾けることで他者の物語を共有します。文化の「間」の教育なので、お互いを知りながら、新しい文化の芽が育っていくのです。
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