毛髪から薬物犯罪を特定! 科学捜査が被害者の無念を晴らす

尿検査では限界がある犯罪の立証
被害者に睡眠薬を飲ませて犯罪が行われた場合、それを立証するには、薬物を飲まされたことを科学的に証明する必要があります。体に取り込まれた薬物を調べる方法は、尿検査が一般的です。しかし、睡眠薬は時間がたつと体内から排出されてしまうため、被害に遭ってから2~3日以内でなければ、尿から検出できなくなります。
例えば性犯罪の被害者は、人に知られたくない、仕返しが怖いといった事情から、警察に行くことをためらうケースが多くあります。そうなると、時間がたってから申告しても睡眠薬を飲まされたことが立証できず、泣き寝入りするしかなくなってしまうのです。
毛髪には「証拠」が残り続ける
この問題を打開すべく、毛髪中の薬物を分析して犯罪捜査に生かす研究が進められてきました。尿と違い、毛髪には体内に取り込まれた薬物が固定されたまま残り続けます。しかも、毛髪は1カ月に約1.1cm伸びることがわかっており、毛根からの距離を測れば、薬物が取り込まれたおおよその時期まで特定できるのです。
研究は既に実際の事件鑑定に生かされ、犯罪が立証された例もあります。尿から検出できない場合に毛髪を使って分析する方法は、国連でも提唱され、世界的に広まりつつあります。また、毛髪は年月がたったからといって腐ることもありません。その特徴を生かし、腐敗や白骨化が進んだ遺体の死因究明に毛髪分析を応用する研究も進められています。
科学の力が安心して暮らせる社会を実現する
ただ、毛髪を分析し、薬物の種類や使われた時期を特定するには、熟練した技術と高性能な機器が不可欠です。特に、犯罪に利用される薬物は、覚醒剤の常習者などが使う薬物の量に比べてごく少量のため、検出が難しいという側面があります。それでも、科学技術を活用した犯罪捜査は着々と進歩しています。「悪いことをしてもバレる」という事実は、被害者が泣き寝入りしなくて済む社会をつくるだけでなく、犯罪そのものを思いとどまらせる抑止力にもなっています。
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大阪医科薬科大学 医学部 医学科 准教授 片木 宗弘 先生
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