楽器の「良い音色」はどうやって生まれる?

職人の経験を科学で解明
「良い音がする楽器」と聞くと、職人が丁寧に作った高価な楽器を思い浮かべるかもしれません。実際、ピアノやバイオリンなどの楽器は、長い歴史の中で職人の経験や感覚によって品質が磨かれてきました。しかし、「なぜ良い音が鳴るのか」は、まだ完全には解明されていないのです。例えば、「この木材は良い音がする」「この形のほうが響く」と伝えられていても、その違いは科学的に説明されていないものが多いのです。そこで、楽器の音を物理学の視点で分析し、音色が生まれる仕組みを解き明かす研究が進められています。
心地よい音とは
沖縄の伝統楽器である三線(さんしん)では、弦を支える細長い「棹(さお)」と呼ばれる部分が音色に関わると言われています。棹には形状が異なる10種類以上もの「型」があります。また、使われる木材も様々ですが、伝統的には黒檀が正式とされています。しかし、黒檀といっても種類も多く、自然界の物で個体差も大きいです。このように、形状や材質が大きく異なる棹が音に与える影響は、十分に解明されていません。
そこで、異なる形状や木材の棹を比較し、振動や周波数、倍音の違いなどを測定します。弾き方の違いが影響しないように「自動弾弦装置」を用い、演奏条件をそろえた上で音を分析します。加えて、人が実際に演奏した音も調べて、「心地よい音」の特徴を探っています。職人の経験として語られてきた良い音をデータとして可視化しようとしているのです。
楽器の改良、開発に
研究によって楽器の音の仕組みが詳しくわかれば、その楽器のさらなる改良の可能性が生まれます。例えば、「より響く形状」や「音色に適した木材」を科学的に設計できるようになるかもしれません。また、新しい楽器開発にもつながります。今注目しているのが、誰でも演奏できる「バリアフリー楽器」です。体の動きに制限がある人でも楽しめる楽器を作ることができれば、音楽を楽しめる人の幅は大きく広がります。楽器の仕組みを解き明かす研究は、新しい音楽体験にもつながるのです。
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神奈川工科大学 情報学部 情報メディア学科 音響・振動・感性工学研究室 准教授 西宮 康治朗 先生
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