快適な気温は氷点下? 氷河の世界に住む不思議な生き物たち

人間の体温だと死んでしまう
北極の氷河やヒマラヤの山岳地帯のような雪と氷に閉ざされた世界には長い間、生き物はいないと考えられていました。ところが、実際には微生物や昆虫、クマムシ、ミミズの仲間など「雪氷生物」と呼ばれる特殊な生き物が生息し、雪氷(氷河)生態系と呼ばれる独特の生態系を形成しています。日本の山岳地帯でも、雪氷生物のカワゲラやトビムシの仲間が積雪の上を活発に歩く姿を見ることができます。
私たち人間にとっては極寒の世界ですが、雪氷生物にとっては0度前後の雪氷圏が快適な環境です。雪氷上の昆虫を捕まえて手のひらにのせると、人間の体温が暑すぎて、すぐに死んでしまいます。
微生物が地球の気候をコントロール?
雪氷生物は地球の環境に決して小さくない影響を与えていることが明らかになりつつあります。例えば雪解けの時期に雪が赤く染まる「赤雪」という現象があります。これは赤い色素を持つ藻類が雪の上に繁殖するために起こります。白い雪が太陽の光を反射して解けにくいのに対し、藻類で赤く着色した雪は太陽光を吸収して速く溶けてしまいます。地球温暖化で氷河の後退が懸念されていますが、雪氷上の藻類も氷の融解を促進しているのです。
氷を解かす雪氷生物は、地球を冷やすクーラーの役割をもつ雪や氷を解かすことで、地球全体の気候にも影響を与えている可能性があります。一般に地球上の生物は気候や環境変化に適応・進化してきたと考えられていますが、雪氷生物は自ら気候や環境をコントロールしてしまう生物なのです。
地球外生物のヒントにつながる雪氷生物
雪氷は地球だけでなく、太陽系内外の宇宙に広く分布します。このような極限環境で生きる生物の研究は、地球外生命をさがすヒントになると期待されます。雪氷生物の研究の歴史はまだ浅く、近年になってようやく研究者の数も増えてきました。世界の研究者が集まって共同で研究することで、広大な地球上にあるさまざまな氷河の研究データを集め、地球の雪氷生態系の全体像の把握をめざしています。
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千葉大学 理学部 地球科学科 教授 竹内 望 先生
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