複雑で面白い脳内の世界 神経細胞の働きを探る

脳の機能を支える神経細胞
脳内には、膨大な数の神経細胞があります。その形は一人一人異なり、遺伝子が形を決めている部分と決めていない部分があることがわかっています。神経は、基本的に一度できると新しく生まれることはありません。生まれてから死ぬまでの約100年にわたって回路を維持し続けることで、人の脳は活動できているのです。ただ、回路の形が一切変わらなければ新しいことを学べません。脳内では、神経細胞が回路を維持しつつ、必要に応じて回路を組み換えているのです。
培養したマウスの神経細胞を観察
細胞同士は、ネットワーク内でつながっています。このつながりをシナプスといいます。人間の場合、1000億個の神経細胞があり、シナプスの数は100兆に及びます。遺伝子の数は2万ほどなので、シナプスの方が圧倒的に多いのです。2万の遺伝子で100兆以上のシナプスを制御する様子を知るためには、細胞自体のシステムを理解する必要があります。脳内の神経細胞は複雑に絡み合っているため、1個1個の細胞がどう情報を処理しているのか見ることは困難です。そのため、マウスの脳の一部を採り出し、神経細胞を培養することで、1個の細胞の制御を調べる研究が進められています。
神秘的な生命現象を解き明かせ
これまでに、神経細胞の向きを保つ仕組みや、ミトコンドリアが信号を出すことで神経細胞が一定間隔で並ぶ仕組みがあることがわかりました。機械とは異なり、「原理はよくわからないものの、うまく動いている」ことが生命現象の興味深いところです。例えば、神経細胞が持つ突起が切られたとき、必ずしも切られた突起が再生するとは限りません。切られて情報の詰まっている箇所が残っていれば同じ突起が、そこも切られた場合は別の突起が伸びることがありますが、その仕組みの一部がわかりました。研究が進み、神経の仕組みが構造的に理解できれば、神経症や認知症など、神経細胞が関わる疾患の予防法や治療法を見つけられるかもしれません。
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福井大学 工学部 物質・生命化学科 教授 小西 慶幸 先生
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