防災教育は「生き方の教育」 被災経験から学ぶ

訓練では教えられないこと
日本は世界有数の災害大国です。地震、津波、台風といった自然の脅威と向き合うことは避けられません。では、「防災教育」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。避難の準備、訓練はもちろん大切であり、命を守ることが防災の大前提です。ただ、備えや避難行動を学ぶだけでは、防災は「いざというときの話」になりがちです。
災害を自分ごととして考えるためには、命とは何か、人とどう支え合うかを見つめなくてはなりません。防災教育は、単なる災害対策ではなく、「どう生きるか」を考える学びでもあります。
学校が心の拠りどころに
東日本大震災の日、ある中学校は卒業式当日でした。津波で校舎は廃虚となり、生徒の多くが家や家族を失いました。学校は内陸に場所を移して再開しましたが、教師たちは「この状況で学校にできることなんてあるのか」と悩みました。それでも、子どもたちのそばに居続けました。
ある卒業生は「学校だけが口を開けて声を出して笑える場所だった」とその後振り返っています。学校が心の拠りどころになったとき、子どもたちは少しずつ前を向き始めました。防災教育は、こうした被災時の経験を伝えていき、「心を育む」目的があります。
被災経験から学ぶものは
ある学校では被災後、子どもたちに「みんなで打ち込めるものを」と探す中で、廃タイヤにビニールテープを貼った手作りの太鼓が生まれました。「ないなら作る」という発想です。子どもたちは練習を重ね、東京駅や東京ドーム、またドイツでも演奏を行いました。かつての校舎跡で演奏したとき、「子どもたちがこんなに頑張っているなら、私たちも頑張ろう」と涙を流す住民もいました。支えられる側だった子どもたちが、誰かを励ます存在になったのです。
防災教育は、災害への備えだけを学ぶものではありません。被災した人たちの経験を知ることは、人と支え合う大切さを理解し、自分も誰かの力になるという学びを得ることができます。そこに、「生き方の教育」として防災教育を行う意味があります。
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仙台白百合女子大学 ※2027年4月より共学化 人間学部 こども教育学科 特任教授 佐藤 淳一 先生
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