製品材料の化学反応を光の力で観察する

見えなかった化学反応
身の回りの多くの製品の材料は化学反応によって作られ、また化学反応によって劣化します。しかし、材料の内部のどこで何が変化しているのかをリアルタイムで見ることができませんでした。レントゲンなどに使われる通常のX線では、内部の形や構造は見えても、化学反応までは捉えられないのです。そこで、「X線」「画像化」「分光」を組み合わせる方法が開発されました。分光とは、物質がそれぞれ固有の波長に反応することを利用して、光を虹のように分けて成分を分析する仕組みです。3つを組み合わせることで、「どこで」「どんな物質が」「どう変化したか」を画像として捉えられるのです。
分光と明るい光で撮影
しかし、分光は光を細かく分けて使うため、分かれた一つ一つの光は非常に弱く、撮影しにくくなります。例えば、夜空の星をカメラで撮る際にシャッターを長時間開けるのは、光が弱いと写真に写りにくいからです。つまり、弱い光では化学反応の瞬間を鮮明に捉えることができないのです。そこで分析には、兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」の超高輝度X線を使用します。普通のX線では37年かかると試算される分析が、SPring-8なら1秒程度で終えられるほど強力な光です。この圧倒的な明るさで、化学反応の様子をリアルタイムで追跡できるようになりました。
燃料電池の反応も解明?
この技術は、ものづくりを大きく変える可能性を持っています。その一つが燃料電池です。燃料電池の内部にはさまざまな材料が使われていますが、これまでは内部で反応や劣化がどのように進むのかを詳しく知ることが難しく、それが開発の大きな課題でした。そこで、研究の結果、燃料電池を壊さずに内部の化学反応を観察し、劣化時に起きる現象を特定することに成功しました。データの中に潜む反応や劣化の原因を明らかにできれば、燃料電池の性能を飛躍的に向上させる新しい戦略が生まれるかもしれません。見えなかった化学反応を見えるようにする技術が、次世代の材料開発を支えていくのです。
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