歴史的建築や街並みを未来に活かす人材を育てる

歴史的建築や街並みを未来に活かす人材を育てる

近代の蚕室の建築意匠を例に「本質」を知る

明治時代、養蚕が国を挙げて推進されていました。そのため、長野県をはじめ全国各地に養蚕のための建物「蚕室(さんしつ)」が残っています。それが街に独特の景観を生み、文化財として指定されているものもあります。
蚕室の歴史や構造を調べると、エアコンがなかった時代にカイコの成育に適した温度や湿度を保ったという建物の部分と仕組みは、独特の意匠が可能にしていることがわかります。例えば、採光・通風・温度管理などに必要な通風孔や窓の形は、地域が違っても共通の形、構造が採用されており、それが特有の外観につながっているのです。歴史的な建築は、建築景観の本質を浮かび上がらせ、これからの建築にとって重要な学びを提供する、保全する価値のある社会的資本だと言えます。

古い建物を活用する仕組み

また、歴史的建築物を保存する意義は、建物を活用することで新たな価値を生み出すことにもあります。地域住民を巻き込んで清掃や補修をし、人々が集える空間として利用することで、街のにぎわいをつくり、新たな産業につながる可能性が生まれます。
ただし、古い建築物を活用する仕組みは、建築の知識だけでは実現できません。その場所に人が集まるための現代の需要、地域の産業との連携、気候風土や快適性など、さまざまな要素を検討しながら、保存・活用の仕組みをつくることが必要なのです。

自然と人の関係を見直す

さらに俯瞰的に見ると、建築だけでは解決できない課題もあります。例えば、以前、日本国内で木材が不足した際、日本は森林資源が豊富なのになぜ木材を活用できないのかが問題となりました。その背景には、山から木を切り出す担い手不足や流通の課題があります。
このような問題を解決するには、建築の枠を超え、木材の生産や加工の現場も含めて自然(環境)・人・社会の関係を捉え直す視点も必要です。
こうした俯瞰的な視野と課題解決力を持つ人材が、サステナブルな社会づくりに求められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

信州大学 学生総合支援センター  准教授 勝亦 達夫 先生

信州大学 学生総合支援センター 准教授 勝亦 達夫 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

建築史

先生が目指すSDGs

メッセージ

課題解決の例えとして、「魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教えよ」と言われます。本学に2027年度に新設される「サステナブル社会協創学環」では、さらにその上を行く問題解決ができる人材の育成をめざしています。例えるなら、「魚の捕り方を学びながら、今後100年も魚が捕れる環境を考え続ける」学問です。将来の気候風土や水質、魚の生息環境にも目を向けることができる、そんな人材の育成をめざしています。一つの専門性だけでは解決できない複雑な問題を、俯瞰的な視点と横断的な専門で解決していきます。

先生への質問

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信州大学に関心を持ったあなたは

信州大学は、人文・教育・経法・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。
松本、長野、上田、伊那に位置するいずれのキャンパスも、美しい山々に囲まれ、恵まれた自然のもと、勉学にも、人間形成の場としても、またスポーツを楽しむにも最適の環境にあります。さらに、地域との連携がきわめて良好であり、地域に根ざした大学としての特色も発揮しています。