宇宙ジェットはなぜ曲がる? 見えない宇宙を読み解く情報科学

電波を「見る」技術
スマートフォンの通信からレーダー、医療機器まで、電波を解析するシーンは私たちの身の回りにあふれています。そこでは、信号処理・相関処理・画像構成といった情報科学の技術が欠かせません。特に信号から画像を構成する際は、受け取ったデータが必ずしも完全ではなく、不足している情報を推定しながら「それらしい像」を作り上げる必要があります。ここが情報科学の腕の見せどころです。
曲がったジェット
電波解析技術は天文学でも活躍しており、その一つが「宇宙ジェット」の研究です。宇宙ジェットは、巨大ブラックホールの周辺から、高速で噴き出すガスの流れです。可視光では見えないため、複数のアンテナを並べた「電波干渉計」が使われます。
例えば、通常はまっすぐ伸びる宇宙ジェットが、MRC0600-399という天体の場合は大きく曲がっていることが観測されています。これは周囲に存在する強い磁場がジェットを押し曲げていると考えられます。そこで、「ファラデートモグラフィー」という手法を用いて検証が行われました。複数の周波数で観測した電波データを解析して、磁場の三次元構造を推定した結果、ジェットが曲がる部分では磁場構造が急激に変化していることがわかりました。ジェットの構造を調べることで、直接観測することが難しい磁場の構造が明らかになったのです。
情報科学で進む宇宙研究
現在、南アフリカでは64基のアンテナが連動し、観測が行われています。より高精度に観測するために、「SKA望遠鏡」の建設がオーストラリアと南アフリカで進んでおり、南アフリカでは2029年頃の第一期運用時に190基以上のアンテナを持つ計画です。
アンテナの台数が増えれば、得られるデータ量も爆発的に増加します。それを処理し切るためには、AIや機械学習の導入が不可欠です。天文学というフィールドで情報技術が活用され、新たな工夫が施され、それがほかの分野にも広がります。見えない宇宙の謎を解くその挑戦は、情報科学のさらなる進化も後押ししていくのです。
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