生き物がヒッチハイクで外国へ? 国を越えた津波の影響を探る

津波の被害は国外にも
2011年3月11日の東日本大震災で引き起こされた津波は、日本のみならず、チリや北米など海外にも大きな被害をもたらしました。歴史をさかのぼると、日本でも1960年に発生したチリ大地震の津波が東北に到達した記録があります。大規模な津波は国を越えて被害を及ぼす場合があるため、海外も含めた「被災圏」を対象に、津波の影響を解き明かす研究が始まっています。
北米に漂着した「瓦礫ヒッチハイカー」
東日本大震災の津波に起因する被害として新たに判明したのが、「瓦礫(がれき)ヒッチハイカー」です。プラスチックや材木、破壊された建造物などの瓦礫に付着して、遠くの地域まで流された生物を指します。東日本大震災では150万トン以上の瓦礫が流出し、対岸の北米沿岸部に数年にわたって漂着しました。その中には現地の生態系に悪影響を与えてしまう瓦礫ヒッチハイカーが含まれています。
例えば、2012年6月に全長20メートルほどのドック(浮桟橋)がオレゴン州沿岸部に漂着しました。ドックの壁面にはワカメをはじめとして約120種類の外来種が付着していました。外来種の拡散を防ぎ、現地の生態系を守るため、ドックの表面はバーナーであぶられ、付着したすべての生き物が除去されました。
津波で交わった生活文化
東日本大震災後、東北地方では復興の最初期から名産であるワカメの養殖を再開しています。日本ではワカメを増やし、対岸の北米ではワカメを駆除する、という対照的な行動が見られたのです。普段であれば、東北でのワカメの養殖は北米の人々や生物の暮らしに干渉しません。しかし、津波によってお互いの生活圏に住む生物が、意図しない形でつながりました。また、瓦礫ヒッチハイカーは「乗り物」となる人工物がなければ大規模には発生しません。つまり瓦礫ヒッチハイカーの大規模発生は、人間の文化と無関係ではないのです。津波によって交わった、人々と生物の暮らしを文化人類学の観点でさらに分析しようと研究が続いています。
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静岡文化芸術大学 文化政策学部 国際文化学科 准教授 内尾 太一 先生
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