街を動かすデザインの力

市民の声を100のアイデアブックに
地方都市の中心市街地では、人通りが減り、空き店舗や空きビルが増えています。こうした街を再生するには、市民や地元の事業者、行政、大学などが、立場を越えて関わることが重要です。
ある中心市街地では、大学の研究チームが地域に入り、市民アンケートで街への思いや意見を集めることから始めました。街の好きな場所や気になる場所について多くの意見が集まりましたが、文章のままでは共有しにくい面がありました。そこで、デザインを学ぶ学生たちがコメントを読み解き、スケッチや図にして視覚化しました。さらに、アイデアをまちづくりの流れに沿って整理したアイデアブックを編集しました。アイデアブックによって市民との思いの共有がスムーズになり、それがまちづくりの出発点になりました。
最初は小さな実践から
アイデアブックに編集された案は、街の中で実験的に実践されました。最初は、歩道に人工芝やベンチを置いて人が集まる場所にしたり、空きビルでワークショップ活動を行う短期のイベントです。参加した福祉施設は次の段階として、空きビルを約1カ月間借りて活動を行いました。さらにその経験を経て、最終的には福祉施設が商店街の中に恒久的な拠点を置くことになったのです。
最初から大きな変化を起こそうとするのではなく、短期の実験、中期の試験利用、恒久的な場所づくりへと段階を踏んだのです。このサイクルをほかの場所や活動にも広げることで、街全体の再生につながると考えられます。
活動の仕組みをデザインする
このような活動を支えているのが、デザインの力です。デザインは、建物やポスターの見た目を整えることだけではありません。集まった情報を整理すること、思いを視覚化して共有しやすくすること、人が集まる空間をつくること、活動が続く仕組みを考えることもデザインです。デザイン学は、その過程を支える学問でもあります。街の課題に対して、人、情報、空間、活動を結びつけることで、地域の未来を少しずつ形にしていくことができるのです。
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