「教師が楽しむ」ことから始まる図画工作科の授業づくり

「教師が楽しむ」ことから始まる図画工作科の授業づくり

「扇風機味」のアイス

ある小学校低学年の図画工作の授業で、「アイスクリームの味を絵にしよう」という課題が出されました。紙に描かれた円の中をクレヨンで塗って、自分だけのフレーバーを表現するという活動です。多くの児童たちはチョコレート味やイチゴ味など、実際に食べたことのあるアイスを思い浮かべて色を塗っていました。そんな中、天井の扇風機を見つめていた一人の児童が、「扇風機の味にする」と言い出したのです。先生が「どんな色や模様?」と問いかけると、「青と白のぐるぐる模様」と答えました。その自由な発想に周囲の児童たちも共感し、次第に教室全体が自由なアイデアで盛り上がっていったのです。

上手・下手だけではない図画工作

図画工作科の授業の目的は、描画技法の習得だけではなく、自由な発想を育み、それを自分らしく表現することにあります。しかし、図画工作に苦手意識を持つ児童は少なくありません。絵の上手・下手を気にして恥ずかしがったり、周囲からの評価を気にして自信をなくしたりすることもあります。
これは図画工作を教える側の教師にも当てはまります。現在、多くの学校では図画工作科の授業を専科の教員ではなく、担任の教師がほかの教科と同様に教えています。そのような状況下で、教師自身が図画工作を「楽しい」と感じ、苦手意識を乗り越えていくことが、児童に楽しさを伝える上で欠かせません。

「楽しい」は教師から

そのために大学での教員養成の授業では、学生たちがさまざまな素材に触れ、実際に手を動かす体験型の授業が模索されています。初めは自分の作品を見せるのをためらう学生も、次第にほかの人の作品を見て学び、互いに発想を共有するようになります。こうした体験を通して、学生たちは「どうすれば児童に楽しさが伝わるか」を考えられるようになっていきます。たとえ図画工作が得意でなくても、教師が児童と一緒に楽しみ、驚きや感動を共有することで、自由な発想が育まれる図画工作科の授業が成立するのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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帝京大学 教育学部 初等教育学科 初等教育コース 講師 大櫃 重剛 先生

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メッセージ

小学校で図画工作科を教えるには、技術面の指導ももちろん大切ですが、それ以上に「どんな目で世界を見ているか」という感性や視点が大事です。自分の「好き」を深めていくと、発想の幅が自然と広がっていきます。だからこそ、高校生のうちにたくさんのものを見て、多くの人と出会い、自分の中にある「好き」や「おもしろい」をどんどん増やしていってください。そして、「私はこれが好き」と自信を持って言えることを大切にしてほしいです。それが将来、子どもたちの創造力を引き出す原動力になるはずです。

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医療系・文系・理系と幅広い分野の10学部32学科を擁する総合大学です。文系学部を中心とした八王子キャンパスでは、約15,000人の学生が学んでいます。東京多摩丘陵の自然豊かな景観に位置し、キャンパスリニューアルにより新校舎棟「SORATIO SQUARE(ソラティオスクエア)」「帝京大学総合博物館」をはじめとした、施設・設備が整備され、教育指針である「実学」「国際性」「開放性」を柱に、自ら未来を切り拓く人材を育成しています。