言葉で表現すること 自分と他者をより深く理解するための文芸学

言葉と音楽が織りなす文学世界
文学と音楽は、現在では別々のジャンルと捉えられることが多いのですが、歴史的に見ればもともとは一体のものでした。人類の歴史において、文字が発明される以前から、人々は歌という形式を通して表現を行ってきました。言葉だけで作られた文学作品も、言葉と音とで作られた音楽(歌)も、ともに言葉を通じて、喜びや悲しみ、憧れや後悔などなど、人間のさまざまな感情を表現するという点が共通しています。その意味では、歌も、小説や詩などの言葉だけで作られた作品と同様に、文学作品であると言えます。
創作を通じた自己表現と共感
そのような歴史を踏まえ、例えば短歌作品をペンネームで提出し、グループで互いに鑑賞・評価し合う授業を行う大学もあります。創作活動を通じて自分を表現し、それによって他者との共感や理解を生み出す場を作り出すことを重視しているのです。学生は、日常や感情を31文字に凝縮して表現します。そのなかで、日常の取るに足らないようなささやかな出来事が、他者の共感を得る作品として価値を持つ、という体験ができます。「孤独な創作体験」が、「共有することのよろこび」につながっていると言えます。
自己と世界をつなぐ文学の力
文学によって、自己を理解する力、他者を理解する力が伸びると考えられます。特に人生の岐路においては、「自分を知ること」が基盤となって、自己の価値観を理解することで、次の一歩が見えてくることもあるでしょう。また、異文化の表現を学ぶことで、言葉の背後にある感性の違いを理解する視点が養われます。こうした文学を学ぶことで、人間の感情や関係性、世界の多様性について考えるきっかけを得ることができます。文学における表現に向き合い、さまざまな方向に想像力を働かせて、何を表わそうとしているのか、いろいろな可能性を探ってゆくことで、言葉と人間の本質について深く考える力が身につきます。
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