「困った行動」なのか? 行動分析で見えた心のサイン

静かな環境なら
着替えを嫌がって寝転んでしまう自閉スペクトラム症の子どもがいました。「着替えなさい」と何度言っても動いてくれません。そこで保護者と一緒に行動を記録してみたところ、テレビが消えている静かな環境では、着替えに取り組む姿が見られることがわかりました。この気づきをもとに、静かな環境で着替えの手順を写真やイラストで示したところ、少しずつ着替えられるようになっていきました。
自閉スペクトラム症の子どもは、言葉より視覚的な情報のほうが理解しやすいことが多いとされています。応用行動分析学では、一人一人の特性に合わせて周囲の環境や関わり方を工夫し、困りごとの解決をめざします。
「ぐずり」の正体は?
よくぐずる子どもがいました。保護者は困り果てていましたが、丁寧に行動を観察するとその理由が見えてきました。言葉で気持ちを言えなかったこの子は、どう伝えたらいいのかわからなかったのです。そこで、絵カードで「ジュースが飲みたい」「このおもちゃで遊びたい」と伝える練習をしたところ、ぐずる回数がぐんと減りました。
一見「困った行動」に見えても、実は「伝えたいけれど伝えられない」もどかしさの表れかもしれません。行動の背景を分析して、その子に合った伝え方を見つけていくことも、行動分析の大切な役割です。
「一人でできる」より大切なこと
障害のある人の支援では、「一人でできるようになること」が目標にされがちです。しかし実際の社会では、誰もが何らかの助けを借りながら暮らしています。忘れ物をフォローしてもらったり、苦手なことを人に頼んだりするのは、誰にでもあることです。
本当に大切なのは、困ったときに「助けて」と伝えられて、自分の気持ちや願いを周りにわかってもらえることです。行動分析に基づく支援では、個々に合った関わり方や工夫を通して、そうした力を育てていきます。
めざしているのは、障害があってもなくても、誰もが安心して学び、社会の中で自分らしく過ごせる未来なのです。
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