日々のデータから、病気のリスクが見えてくる

日々のデータから、病気のリスクが見えてくる

集団を研究する学問

私たちは病気になると病院へ行き、検査などを受けて医者と治療方針を決めていきます。このように個人の疾患に対応する臨床医学とは異なり、社会医学という分野では「集団」が研究の対象です。集団から得られるデータを解析することで、さまざまな健康上の問題や課題を見つけ出し、人々や社会全体における健康状態の向上をめざす学問です。研究の知見を社会に還元しやすく、人々に行動の変化を促すのも重要な役割の一つです。コロナ禍のような突発的な状況にも対応できるスピード感や、研究内容が人々の生活と直接つながっているところがこの学問の特徴と言えるでしょう。

生活習慣(睡眠や運動)は病気につながるのか?

睡眠不足になると、さまざまな健康障害が起こることが知られています。しかし睡眠に大事なのは、時間だけではありません。研究の結果、「不規則性」も健康に大きく影響することがわかりました。夜勤などのシフトがある人や、平日と休日の就寝時間が異なるなど、睡眠に不規則性のある人の方が、死亡リスクが高く出ると判明しています。ほかにも、座っている時間の長さと乳がんにも関連性が見られました。ガイドラインにあるように、乳がんの5~10%は遺伝性であり、また遺伝以外の因子も多数関与しています。一日あたりの座っている時間が7時間以上の女性は、乳がんにかかるリスクが4割近く高くなるとの結果が出ているのです。

世代を超えた交流が健康を促進する

人と人のつながりも、健康に影響を及ぼします。高齢化が進む中で、とりわけ注目されているのが世代を超えた交流です。例えば学生が高齢者の血圧を測ると、測定された高齢者はとても喜びます。このような多世代交流によって人の健康がつくられるという研究結果も出ています。病院という場所を、治療のためだけに行くところとみなすのではなく、人と人のつながりを生み出すコミュニティデザインの視点から考えるのも重要です。コミュニティデザインの研究は、今の社会医療の重要な課題となっています。

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先生情報 / 大学情報

奈良県立大学 地域創造学部 地域創造学科 准教授 小山 晃英 先生

奈良県立大学 地域創造学部 地域創造学科 准教授 小山 晃英 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

社会医学、公衆衛生学

メッセージ

病院や医療と関わるためには、何か医学系の資格が必要だと考えている人は多いと思います。しかし、データ解析やウェブ調査は資格を必要としません。「白衣を着ない医療」が人の健康の質を上げるうえで重要な役割を果たしています。社会に興味のある、または健康や医療に貢献したいと考えているなら、社会医学という学問はお薦めです。受験に向けた勉強は、時間が長ければよいというわけではなく、集中する時間とオフの切り替えが大事ですし、体も動かすよう心掛けてください。

奈良県立大学に関心を持ったあなたは

■「基本理念」
わが国が21世紀において、さらなる発展を遂げるためには「地域」に視点を置いた教育研究が必要です。地域経済や観光に関する教育研究により、地域づくりに貢献できる優れた人材を養成するとともに、研究活動の成果を地域に還元し、さらに地域に開かれた大学として生涯学習の場を提供することによって、社会・文化の発展に寄与すること。
■「地域創造」とは
経済、文化、歴史、社会等に関して一つのまとまりとしての意味を持った地域を活性化し、人々が豊かな生活を享受できる地域社会を築くことです。