建築を語る力―共感を生むストーリーテリング

建築を語る力―共感を生むストーリーテリング

建築が語る、まちの記憶

ヨーロッパでは、古い建物を修復しながら何百年も使い続ける文化が根づいています。建て替える際も象徴的な要素を新しい建物に残し、過去と現在をつなぎます。建築は人々の暮らしとともに歴史を刻み、まちの記憶を未来へ受け継ぐ存在です。
一方、日本では老朽化した建物を壊して建て替える「スクラップ・アンド・ビルド」が進む中、歴史的建築を改修して活用する動きが各地で広がっています。建物を再生することは、単なる再利用ではなく、地域の文化と記憶を未来へつなぐ重要な営みでもあります。

建築再生とクラウドファンディグ

建築の再生・活用には多くの費用と時間が必要です。近年では、インターネットを通じて広く支援を募る「クラウドファンディング」が活用されています。しかし、資金を集めるには「なぜ残したいのか」を明確に伝えることが欠かせません。
建物が建てられた時代背景や技術的価値、地域での役割をわかりやすく示し、文化財としての意義を補強することで、より多くの人の共感を得ることができます。共感こそが、建築再生の力となるのです。

ストーリーテリングの力

資金と同じくらい、建築の保存・再生に欠かせないのが、人々の「共感」です。その有効な手段が「ストーリーテリング(物語化)」です。建物を「人と時間が刻まれた場」として語ることで、支援者や地域の人々に共感を広げることができます。
大切なのは、伝える相手に合わせた表現です。たとえば「ピロティ」という言葉は「柱に支えられた外部空間」を指しますが、建築関係者には理論的に、子どもには「雨宿りや休憩ができる場所」と伝えることで理解が深まります。相手に届く言葉で語ることが、建築を未来へつなぐ力になるのです。つまり、ストーリーテリングによって、建築の歴史や価値を伝え、共感を得ることができれば、地域の文化を未来へと引き継ぎ、豊かな社会の実現につながることでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京家政大学 家政学部 / 文化情報学環 ※2026年4月設置予定 造形表現学科 准教授 和田 菜穂子 先生

東京家政大学 家政学部 / 文化情報学環 ※2026年4月設置予定 造形表現学科 准教授 和田 菜穂子 先生

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建築史、都市史、社会学、観光学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私が北欧へ留学した当初、慣れない生活に不安でいっぱいでした。9月に渡航しましたが、日毎に日照時間が短くなり、気分がさらに落ち込んだものです。その時、北欧の人たちは長い冬を楽しく過ごすために、カラフルで明るいデザインのインテリアを暮らしに取り入れていることに気づきました。温もりのある照明や家具は、気候や国民性から生まれた知恵です。以来、「建築と幸せな暮らしの関係」についての研究は私のライフワークとなりました。あなたもさまざまな経験をしながら、自分ならではの研究テーマと出会ってください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京家政大学に関心を持ったあなたは

東京家政大学は、明治14年、144年前に職業人(教員)養成校としてスタート。仕事を通して社会とかかわり、自分の生き方を真剣に考える堅実な女性を育ててきました。資格取得、専門教育への学生の満足度は外部調査で全国第一位を連続獲得。専門職に強い大学です。今までも、これからもこの姿勢を変える事なく「自分の力で夢をかなえ、自分の道をしっかり歩く女性」をていねいに支え続けます。