講義No.15643 医療技術

認知症予防に期待! 高齢者が楽しめるeスポーツ

認知症予防に期待! 高齢者が楽しめるeスポーツ

仮想空間で体を動かし健康増進

VR技術とeスポーツ(対戦型コンピュータゲーム)を組み合わせ、仮想空間で実際に体を動かすことで、高齢者の認知症やフレイル(要介護まではいかない虚弱状態)の予防をめざす研究が進められています。例えば赤と青の物体が飛んできて、それを同じ色のライトセーバー(剣)で切るといったゲームがあります。矢印の方向に従って切ったり、音楽に合わせて動いたりすることで、脳の活性化と身体運動を促すことができるのです。ポイントは、高齢者が親しみやすい音楽や単純な動きで構成することです。リハビリテーションを「訓練」としてではなく、「楽しみ」の1つとして意欲的に取り組んでもらえます。

認知機能向上や痛みの緩和も

地域のふれあいサロンに集まる高齢者を対象にした研究によると、ゲームを複数回行って得点が高くなるほど、認知機能検査の結果が向上することがわかってきました。また、座ったままゲームをしているにもかかわらず、歩くスピードが速くなるなど身体機能の改善傾向も報告されています。
さらに、痛みがやわらぐという声も聞かれています。痛みで腕が上がらなかった人が、ゲームを行うと痛みを感じなくなるケースが多くあるのです。これは、視覚情報が痛みの信号よりも早く脳に届くため、VR映像の世界に没入すると痛みがブロックされるからだと考えられます。

医療現場での安全な活用に向けて

色を判別する、指示された方向に従って動く、音楽のリズムに合わせるといった、2つ以上の課題を同時に行う「デュアルタスク」は、認知機能の向上に非常に有効とされています。近年は、認知症の予防だけでなく改善まで視野に入れた研究も始まっています。
一方で、VR技術を使ったeスポーツをリハビリテーションに活用するには、ゴーグルを装着して動く際の安全性の確保が課題となっています。今後は現実世界と仮想世界を融合させるMR技術やAR技術へと発展させて、周囲の状況を把握しながら安全にプレイできる環境の整備が期待されます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 教授 沖 雄二 先生

帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 教授 沖 雄二 先生

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作業療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたが将来、作業療法士をはじめ医療者をめざすのであれば、学生時代にボランティアやサークル活動などさまざまな経験をしてほしいと思います。それは人に興味・関心のある人が医療者には向いているからで、人が何に困っているのか理解できる人ほど長く続けられる仕事だからです。
一方、よく理系の人がめざす分野だと思われがちですが、患者さんとのやりとりなどでは国語力が必要です。実際に文系の人も多く活躍していますから、理系・文系にとらわれずめざしてほしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

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帝京大学 福岡キャンパスは有明海に面した雄大な自然と最新設備が揃ったキャンパスです。理学療法、作業療法、看護、診療放射線、医療技術(救急救命・臨床工学)の5学科を擁する福岡医療技術学部では、現代の高度な医療に欠かせない知識や技術に加え、患者さんや他職種のスタッフへの想像力やコミュニケーション能力といったチーム医療に必要とされる素養を高めながら、大牟田市という歴史ある土地で官民一体となり、各自治体と連携しながらさまざまな取り組みを実施していくことで医療のプロとして地域に貢献できる人材を育成します。