認知症予防に期待! 高齢者が楽しめるeスポーツ

仮想空間で体を動かし健康増進
VR技術とeスポーツ(対戦型コンピュータゲーム)を組み合わせ、仮想空間で実際に体を動かすことで、高齢者の認知症やフレイル(要介護まではいかない虚弱状態)の予防をめざす研究が進められています。例えば赤と青の物体が飛んできて、それを同じ色のライトセーバー(剣)で切るといったゲームがあります。矢印の方向に従って切ったり、音楽に合わせて動いたりすることで、脳の活性化と身体運動を促すことができるのです。ポイントは、高齢者が親しみやすい音楽や単純な動きで構成することです。リハビリテーションを「訓練」としてではなく、「楽しみ」の1つとして意欲的に取り組んでもらえます。
認知機能向上や痛みの緩和も
地域のふれあいサロンに集まる高齢者を対象にした研究によると、ゲームを複数回行って得点が高くなるほど、認知機能検査の結果が向上することがわかってきました。また、座ったままゲームをしているにもかかわらず、歩くスピードが速くなるなど身体機能の改善傾向も報告されています。
さらに、痛みがやわらぐという声も聞かれています。痛みで腕が上がらなかった人が、ゲームを行うと痛みを感じなくなるケースが多くあるのです。これは、視覚情報が痛みの信号よりも早く脳に届くため、VR映像の世界に没入すると痛みがブロックされるからだと考えられます。
医療現場での安全な活用に向けて
色を判別する、指示された方向に従って動く、音楽のリズムに合わせるといった、2つ以上の課題を同時に行う「デュアルタスク」は、認知機能の向上に非常に有効とされています。近年は、認知症の予防だけでなく改善まで視野に入れた研究も始まっています。
一方で、VR技術を使ったeスポーツをリハビリテーションに活用するには、ゴーグルを装着して動く際の安全性の確保が課題となっています。今後は現実世界と仮想世界を融合させるMR技術やAR技術へと発展させて、周囲の状況を把握しながら安全にプレイできる環境の整備が期待されます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報

帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 教授 沖 雄二 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
作業療法学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

