赤ちゃんの「目」が解き明かす、言葉を学ぶ力のヒミツ

赤ちゃんの「目」が解き明かす、言葉を学ぶ力のヒミツ

人は言語能力をもって生まれる

「人は生まれながらに言語をつかさどる力をもっている」とは、言語学者ノーム・チョムスキーの考え方です。生まれや環境により多少の個人差は生じますが、言語はどんな環境で育ったとしても、ほとんどの人が一定のレベルに到達するというものです。

乳児は言葉をどう理解している?

人は言葉を名詞から覚え始めると考えられています。この「名詞優位」の現象の調査で、まだ言葉を話せない乳児を対象に用いられるのが、「選好注視法」という手法です。興味をもつ対象を長く見る乳児の習性を利用したものです。例えば、「ルチる」という、実際にはない言葉とともに「パペットA」が「Xの動き」をしている動画を見せます。続けて「パペットAのYの動き」と「パペットBのXの動き」を同時に見せて、どちらを注視するかによって、その言葉を名詞(物)と動詞(動き)のどちらととらえているかを測定します。同じ初めて聞く言葉でも、大人は「ルチる」を動詞ととらえるのに対し、乳児は名詞ととらえる傾向にあることがわかっています。
名詞優位は多くの言語で共通していますが、英語を母語とする人は生涯名詞優位のままであるのに対し、日本語を母語とする人は成長過程で動詞優位に切り替わります。この違いには、日本語が動詞を文末に置く語順であることが関係していると考えられます。また日本語の場合、小学5年生頃を境に動詞優位へ転換することがわかってきました。これには10歳くらいで語彙が急増することの影響ではないかと考えられています。

ゆっくりでも、ちゃんと追いつく

同じ手法を、言語発達に遅れが生じやすいダウン症の子どもたちに適用した研究も進められています。その結果、健常児と比べて動詞優位への転換に数年の遅れがみられるものの、同じ言語習得のプロセスをたどることがわかりました。つまり、障がいの有無が言語習得能力に大きく影響することはないのです。この知見は、障がいのある子どもたちへの言語セラピーへの応用が期待されています。

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神戸女学院大学 国際学部 英語学科 教授 松尾 歩 先生

神戸女学院大学 国際学部 英語学科 教授 松尾 歩 先生

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メッセージ

高校生のうちから、できるだけ多くの「自分とは異なる人」と交流してみてください。海外への短期留学でも、日本を訪れる外国人との交流でも構いません。異なる人種、宗教、価値観、アイデンティティをもつ人たちと接することで、「違って当たり前」という感覚が自然と身につきます。外国に出て異なる文化や言語にさらされることは、視野を広げ、人生の可能性を広げる土台にもなります。自分で考えて、自分の言葉で人とつながる力を育てましょう。

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