臨床心理学:安心感を基盤とした心理的な支援の実践と研究について

臨床心理学という学問
臨床心理学は、人の心の仕組みを客観的・科学的に理解しようとする視点と、人が感じている主観的な体験や感覚を大切にしようとする視点、その両方を併せ持つ学問です。専門的な理論に基づいた見立て(アセスメント)と、目の前の相手を一人ひとりの人として最大限尊重して理解し、関わろうとする姿勢・対応、この二つの間を何度も往復しながら、一人ひとりに最適な支え方を考えていきます。マニュアル通りの答えを出すのではなく、個別の事情に合わせて「何が助けになるか」を粘り強く探っていく、そんな実践の積み重ねが、この学問の土台となっています。
言葉を届ける関係と環境を整える
臨床心理学の実践では、相談者とどのような言葉を使ってやり取りをするか、ということと同じかそれ以上に、相談者がどれほど安心して話ができる関係を築けるかが重要です。支援者は相談者の悩みに向き合うと同時に、相談者との信頼関係を丁寧に築くことを支援の土台としています。信頼関係という土台があって初めて、言葉が支援としての意味を持つからです。また、相談者は支援の時間が終われば日常に戻ります。そのため、本人の話を聞くだけでなく、時には家族や周囲の人たちとの関わりを調整することもあります。本人を取り巻く環境が少しでも安心を感じられるものになるよう、周りの人たちと一緒に「支え方の工夫」を考えるのです。本人の心と、それを取り巻く日常の橋渡しをすることも、大切な専門性の一つです。
現場の気づきを次の支援に
臨床心理学では、現場や実践で得た気づきを丁寧に分析し、それを次の支援の質を高めるための「知恵」に変えていきます。人と人が向き合い、言葉を交わすことで心が安定していくプロセスを、科学的な目で整理し、積み重ねていくのです。そうして得られた「知恵」を共有することが、研究の大きな意義です。「目の前の人の役に立ちたい」という実践の想いと、それをほかの支援者とも共有できるものにする研究の視点、この両輪が合わさることで、臨床心理学は発展し続けています。
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創価大学 教育学部 教育学科 准教授 大町 知久 先生
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