「西洋のマネ」で本当に幸せ? インドから考える社会のあり方

外からの工業化、画一的教育
国際開発学の視点で世界を見たとき、「すべての国や地域が、西洋社会と同じような方向性で近代化しなければならないのか」という疑問が浮かびます。世界各地には独自の文化や言葉、価値観があります。外からの介入によって工業化や画一的な教育を進め、受け継がれてきた文化を衰退させるのは、本当によいことなのでしょうか。
失われつつあるラダック文化
インド最北部にあるラダック地方が直面している問題を見てみましょう。インドの少数民族であるラダックの人々は、チベット仏教と土着の神々をどちらも大切にし、独自の文化を築いてきました。農作業で口ずさむ歌もその一つです。歌詞には、伝統農法のコツや村の成り立ちという、村の多くの情報が含まれています。子どもたちは農作業を手伝ううちに歌詞を覚え、村の歴史や文化を学んできました。このように学校教育とは別に、生活の中で自然と学ぶ現象を「インフォーマル教育」と呼びます。
ラダックは2019年にインド政府の直轄地になり、近代化が急速に進んでいます。農業にもトラクターなどの機械が導入され、農作業が効率化するなどの利点がある一方、歌を口ずさむ機会はほとんどありません。このままでは歌詞に含まれていた文化も失われます。さらに学校教育も政府の定めた内容です。ラダックの言葉は教えているものの、伝統的な農法や村の歴史、信仰などラダック独自の文化を学校で学ぶ機会はありません。
文化の継承と再創造―学校外の教育が秘める可能性
ラダックの人々は文化の喪失に危機感を持ち始めています。現在ラダックでは、伝統文化を継承しながらも、新たな考えや技術を取り入れて文化の再創造が行われています。伝統農法を使って新たな事業を生み出したり、学校以外の場で子どもたちがラダック文化を学ぶ「ノンフォーマル教育」の機会がつくられています。近代化の進むラダックにおいて、学校外の教育である「ノンフォーマル教育」や「インフォーマル教育」が伝統文化の継承と再創造に果たす役割の検証が求められています。
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