正解がない保育 子どもにとって望ましい成長とは

目的ではなく「体験」を重視
教育のあり方は一つではなく、「正しさ」も一様ではありません。学校教育では、時間割に沿って目的に向かう授業が行われます。一方、保育所や幼稚園では、子どもがその場で経験したことをもとに行動が広がることを重視します。例えば、授業中の落書きは学校では注意されますが、保育の場では、子どもの表現として受け止めることもあります。こうした対応の違いは、人の育ちへのかかわり方をとらえる視点の違いに起因します。保育学にはさまざまな学問基盤がありますが、教育哲学や子ども学を横断する研究も行われています。いわば「子どもにとって望ましい成長とは何か」という、哲学的とも言える問いを考える研究です。
保育の思想を考える
研究で鍵となるのは、保育における「生活」という概念です。学校では目的志向の時間(=授業)で構成されるのに対し、保育は子どもがその時の興味に従って自発的に行動する時間(=生活)が重視されます。このような考え方は、大正時代の教育者・倉橋惣三らの主張に端を発し、日本の保育の基盤となっています。あるべき保育の姿や、何が子どもにとって一番良いか、については、すぐに答えは出ませんが、過去の保育の実践や思想を読み解くことは、現代の保育の姿を見直す手がかりの一つになります。
保育の質は社会につながる
こうした研究は保育者の養成とも深くかかわっています。保育者養成校ではさまざまな実践的な知識を学ぶことができますが、その知識をそのまま適用するのではなく、「なぜ良いのか」「どのような状況で有効か」を現場で自ら考える力も求められます。乳幼児期は人間の基盤が形成される重要な時期であり、保育の在り方は社会の価値観とも密接にかかわっています。子どもがどのような環境で育ち、何を経験するかは、将来社会を形づくる人間としての土台となります。保育の姿を問い直すことは、子どもの成長だけでなく、社会の在り方を見つめ直すことにもつながると言えます。
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