「観る力」を育む 21世紀のリベラルアーツ

観光を忘れた日本
いまの日本には、海外から外国人がたくさん訪れます。その一方で、海外旅行や国内旅行に出かける日本人は、ここ30年近く減少し続けています。日本の「観光離れ」は、世界でも珍しい社会問題です。このまま「内向き」な傾向がさらに続いていくと、未来の日本社会はどうなっていくのでしょう。例えば海外も国内も旅行しない、自分の日常に閉じこもる日本人が増えていくと、異文化や多様性への理解度が低くなり、検証もせずに「日本が一番」「日常が一番」という、排他的で狭く浅い考え方が広まっていくかもしれません。
五感で「学び」、多様に「問う」
観光は、五感を使った世界の体験であり、学びです。歩き回って、異郷を見て、音を聴き、匂いを嗅ぎ、物に触れ、さまざまに味わいます。そこでは日常とはまったく異なる世界や思考の体験が待っています。例えば、電車が予定通りに来ないのに、駅でイライラせず何時間でも待っている人たち、世界中から集められたゴミの山で楽しそうに遊んでいる子どもたち、そうした光景を観れば、日本での自分たちの日常が、唯一でも、絶対でも、まして最高でもなく、選択肢の1つでしかないことに気づきます。それは、多様性の価値を理解して、さまざまな世界を体験し、より自由に生きる力、つまり「観る力」を育むことにつながります。
迷子になる自由
遠い海外に行かなくても、ちょっとの工夫で、私たちは日常の中でも「観光」をすることができます。例えば、迷子になることです。いつもは降りない駅で途中下車して、スマホの地図アプリを使わず、ずんずん歩いてみると、初めて見る建物や知らない路地、面白い公園などに出会います。あるいは、どこにでもあるリユース・ショップに入ってみると、そのまちに生きる人たちが好む服や漫画、スポーツ用品があり、異なる文化があることに気づかされます。
観光学の価値は、観光業界で働く人材を育て、地域経済を振興することに留まりません。もっと自由に生きる人の「観る力」を育む、21世紀のリベラルアーツです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
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先生情報 / 大学情報

獨協大学 外国語学部 交流文化学科 教授 山口 誠 先生
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観光学、社会学、メディア研究先生が目指すSDGs
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