わずかな体温差で不調になる人体の謎 細胞の反応を究明

細胞の温度を変えて実験
ヒトの平熱は約37℃です。しかし、インフルエンザなど感染症で体温が38℃になるだけでも、強いだるさや不調を感じます。1℃の差とは大きいように見えますが、絶対温度(ケルビン, K)に換算するとわずか0.3%の変化にすぎません。こんな小さな温度変化に体が敏感に反応する理由は、実験が困難なために未解明のままでした。しかし近年、0.1℃単位で実験細胞の温度を調整できる装置が開発され、体温の小さな変化が細胞の働きにどのような影響を与えるのかが、現在詳しく調べられつつあります。
体温変化への反応を検証
わずかな体温変化は、「体内時計」とも深く関わっています。全身の細胞一つ一つが「時計」を持っており、脳の中枢が決定した標準時刻を細胞が受け取る際、体温が関わっています。細胞の中の時計を動かすタンパク質を調べた結果、温度変化に対する細胞の反応は、「メッセンジャーRNA」からタンパク質を作る「翻訳」の段階が主要な作用点であることが明らかになりました。
これまで生物学では、遺伝子から「メッセンジャーRNA」という中間体を作る「転写」の過程が重要だと考えられてきており、その後にタンパク質を作る翻訳の段階は、あまり注目されていませんでした。しかし、転写を制御するタンパク質を除去しても、細胞は温度を感知し続けた一方、翻訳に関わる部位を薬剤で抑えると温度感知ができなくなることが確認されました。これまで重要ではないと考えられていたプロセスが鍵だったのです。
謎が多い体温の仕組み
シャーレ内の細胞の現象が実際の生物の体内で同じように起こるとは限りません。それを確かめる研究のために、薬で動物の体温を変化させる方法も開発しています。
実は、人の平熱が約37℃である理由もまだわかっていません。その解明に近づくため、体温が免疫や代謝にもたらす影響も翻訳の過程が重要なのかが調べられようとしています。体温という身近な現象には、まだ解き明かされていない生命の仕組みが数多く隠されているのです。
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