万人にコミュニケーションを生み出す音楽の力

音楽が人との距離を縮める
初対面の人同士が集まると、最初は前を向いたまま、会話も少ないことがあります。しかし、一緒に歌い始めると、少しずつ表情が変わっていきます。隣の人と笑い合ったり、自然に声をかけ合ったりするようになるのです。音楽には、人と人の距離を縮める力があります。
地域の音楽カフェでは、いろいろな年代の人たちが好きな歌をリクエストしながら一緒に歌っています。最初は「一度だけ参加してみよう」と思って来た人が、次回もまた参加することも珍しくありません。音楽を通して、人とのつながりや「ここにいていい」という安心感が生まれるのです。
歌が記憶を呼び覚ます
音楽は、人の記憶とも深く結びついています。認知症でほとんど言葉が出なかった人が、歌をきっかけに突然流ちょうに話し始めることがあります。歌詞とメロディーを聞いた瞬間、昔の記憶や当時の情景がよみがえるのです。
音楽による変化は高齢者だけではありません。保育園や小学校で子どもたちが一緒に歌ったり体を動かしたりすると、友達の動きや声に影響を受けて、新しい表現が次々と生まれていきます。音楽は「上手に演奏するためのもの」だけではなく、「人の心を動かし、コミュニケーションを生み出すもの」です。
誰一人取り残さない音楽の場を
音楽教育では、「上手に歌えるか」「楽譜が読めるか」が重視されることがあります。しかし、音楽療法の考え方では、歌えなくても、その場にいるだけで意味があります。声が出なくても、表情が和らいだり、体が少し揺れたりするだけで、音楽を感じているからです。例えば、障がいのある人も、言葉を失った高齢者も、それぞれの形で音楽に参加できます。音楽教育と音楽療法という、二つの視点を組み合わせることで、「誰一人取り残さない音楽の場」をつくることができます。
音楽は、特別な才能を持つ人だけのものではありません。楽譜が読めなくても、歌が得意でなくても、誰もが音楽を楽しみ、人とつながる力を持っているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
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