美術作品をデジタルアーカイブで後世に 芸術家の遺品を残し伝える

美術作品をデジタルアーカイブで後世に 芸術家の遺品を残し伝える

芸術家の遺品をどう扱う?

美術の世界には、芸術家の遺品をどう扱うか、という課題があります。作品や資料をすべて残しておくのは困難な作業です。保管場所がないという事情もありますが、価値のある資料だとわからず捨てられるケースもあり、このままでは美術史において重要な作品まで失われてしまうかもしれません。そこで研究者が専門知識や作家の人となりに基づいて残すべき資料を判別し、デジタルアーカイブで保存する取り組みが行われています。

デジタルアーカイブの利点

作品や資料はデジタル化してまとめることで、劣化せず、保管場所も節約できるほか、作品の関連性を見やすく整理できるという利点があります。遺品はさまざまな時期や場所で発見されるため、その場では資料同士のつながりがわかりませんが、デジタルアーカイブとして1カ所にまとめる過程で関係性が整理されていきます。アーカイブ化のための分析で気づくこともあり、新たにわかった内容を基に企画展が開催されることもあります。

作家の姿を新たな方法で発信

1970年大阪万博のパビリオン制作を指揮した芸術家、山口勝弘は戦後の前衛芸術を代表する作家の一人です。1970年代から90年代頃にかけて活躍してきましたが、2001年に病気で倒れ、活動を耳にすることがなくなりました。病後は創作をしていないと考えられていましたが、弟子たちの資料整理によって、2000年以降に制作された手描きイラストが数多く発見されました。
約50枚の絵の共通点を調査すると、すべて兵庫県内の美術館季刊誌の表紙の為に描かれた原画と判明し、病後も創作を続けていたことがわかりました。病後の絵には表現の変化が見られ、晩年に到達した作風は、前衛芸術の研究者にとって大きな価値がありました。そこで弟子たちは原画などの資料をアーカイブ化し、バーチャル展覧会の開催をもって、作品を誰もが閲覧できるように公開しました。
このように、作家のまだ知られていない姿を発信し、後世の美術史研究に貢献するため、アーカイブ化の活動が続いています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

甲南女子大学 文学部 メディア表現学科 教授 八尾 里絵子 先生

甲南女子大学 文学部 メディア表現学科 教授 八尾 里絵子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

メディア、デザイン、アート

メッセージ

いま持っている興味を掘り下げるだけでなく、新たな世界に飛び込んでみましょう。大学で選んだ学問だけに一生取り組んでゆくわけではありません。私はビアニストや画家、恐竜学者や考古学者など、多くの夢の中から「絵が描きたい」という気持ちを選んで、芸術系大学に進学しました。しかし現在はアートのアーカイブ活動に携わるようになり、考古学に取り組んでいる気がします。一度は置いてきた興味も、いつか学問を通してつながるかもしれません。学びの面白さを感じながら、さまざまなことに挑戦してほしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

甲南女子大学に関心を持ったあなたは

本学園は、2020年に創立100周年を迎え、長い歴史と伝統を受け継ぎながら、建学の精神「まことの人間をつくる」に基づき、誠実で品位のある女性の育成に努めてまいりました。管理栄養・看護・理学療法・言語・文化・子ども・心理などの専門領域の学習フィールドを備え、7学部9学科と幅広い分野において、社会で発揮できる能力や専門知識が身につく豊かな学びの環境を整えています。神戸の街と空、海を望むキャンパスには、あなたを大きく成長させる学びや出会いがあふれています。