作家専用の辞書を作る 英文を愛でる英語文献学の世界

英文の魅力を探る
英語文献学は、テキストに書かれた英語をじっくり味わいながら読む研究分野です。文章をただ日本語に訳すのではなく、文法や言葉の使い方、その背景にある文化や歴史にも注目して、英文を深く読み解きます。この読み方を「精読」といいます。
言葉の選び方や使い方に注目すると、日本語訳だけではわからない作者の工夫や「文体」が見えてきます。英語文献学では、こうした細かな表現を一つ一つ読み解き、英文の奥深さを探ります。
作家専用の辞書「レキシコン」
英語文献学では、「遠読」という研究方法も使います。遠読では、電子化された膨大な量のテキストを分析し、作家や時代の特徴を探ります。ある研究では、先述の精読と遠読を組み合わせて、作家ごとの言葉の辞書「レキシコン」を作成しています。
例えば、19世紀イギリスを代表する作家チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』には、the Wise Menという表現が登場します。これは「5人の賢者」を意味しますが、単語を一つずつ調べても、この意味はわかりません。レキシコンでは、意味を持つ言葉の最小限のまとまりを一つの用語として扱うため、作家と作品独自の表現を調べることができます。
遠読でわかる作家の特徴
ディケンズのレキシコン作成は、英語学者・山本忠雄博士によって戦前に始まり、現在まで受け継がれています。現在はデジタル化も進み、ディケンズの手紙と小説を比較して、表現の特徴を調べる研究も行っています。例えば「favor」と「favour」の使用を調べると、ディケンズが手紙などの私的な文章と、小説など出版を目的とした文章で、つづりを使い分けていたことがわかります。
このように、精読と遠読を組み合わせることで、英語の変化や作家独自の表現、言葉の使い分けを明らかにできます。英語文献学は、英語を正確に読む力を身につけるだけでなく、言葉の背景にある文化や歴史、人々の考え方まで探ることができる、奥深い学問です。
参考資料
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先生情報 / 大学情報

広島大学 文学部 教授 今林 修 先生
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