1分1秒を争う救急救命に必要な判断とは

救急現場学で対応力を高める
今、救急医療は切迫した状態にあります。総務省消防庁の統計によると、20~30年前までは救急車が現場に到着する平均時間は4分ほどでした。しかし、2024年は約10分と遅くなっており、時間は年々伸びています。要因としては、高齢化が進んだ影響や緊急性の低い出動要請の増加などが挙げられます。
救急救命士は限られた時間の中で、命を救うために効率よく的確に対処する必要があります。そのため、救急現場学という学問では、救急救命士が蓄積してきた経験や医学的根拠を検証し、現場の状況判断や活動効率の向上をめざします。
到着前にあらゆる想定
現場到着後にすぐ対応できるよう、移動中の救急車では、通報者や関係者に確認して患者の容体や現場の様子を把握します。疾患やけがの状態に合わせて優先順位や搬送先の病院を検討するなど、必要な準備を整えます。
応援が必要と判断したら、応援隊がスムーズに現場に来られるよう、エレベーターを1階に戻しておく、玄関の靴を端に寄せるなど、先を読んだ行動を考えておかないといけません。一刻を争う事態では、医師の電話による指導のもと、救急救命士が点滴や気管挿管といった救命処置を行います。どのような状況でどんな行動が必要かを事前に想定しておくことで、効率を高めることができるのです。
延命拒否の患者対応も
一方で、現場での判断が難しいケースがあります。一例が、高齢者などが蘇生や延命措置の拒否を意思表示している場合です。家族やかかりつけ医と相談して意思を決めていても、いざとなると家族が救急要請することがあります。助かるなら助けてほしいという、家族の気持ちも当然です。
医療において守るべき指針となる生命理論の原則には、患者の意思を尊重する「自律尊重の原則」と、患者にとって何が最善かを考える「善行の原則」があります。延命拒否を尊重するか、救命するかという問題に直面することもあるのです。こうした問題を含めたさまざまな事例の検証が、現場活動に生かされるのです。
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帝京大学 福岡医療技術学部 医療技術学科 救急救命士コース 講師 伊藤 二郎 先生
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