量産品の音色を熟練職人のヴァイオリンに近づける

量産品と職人のヴァイオリンの音色の違いを数値化
美しい音色を奏でるヴァイオリンですが、熟練の職人が作ったものは百万円以上と高額であり、誰もが気軽に購入し演奏を楽しめない現状があります。一方、工場で量産されるものは数万円からあり安価ですが、よい音色が出せないことが多いのです。
それぞれの音色を計測して、比較すると、量産品は職人の作ったものに比べて滑らかな波形でないことがわかりました。どのような素材でどのような形状に加工をすればよい音色が出るか、コンピュータで形状モデルを作成し、職人が作ったものの波形に近づける研究が行われています。
木材・ニスの材料データを分析し、計算モデル化
ヴァイオリンは、木の「箱」と弦、弦を支える駒などで構成されており、弦と板の振動で音色が決まります。ヴァイオリンの材料はマツやカエデの仲間の木材です。その種類や厚さ、表面を保護するニスなど、さまざまな要素が振動、音響にどう影響するかを解析し、どのような波形になるか、職人が制作したヴァイオリンの端材で材料データの分析が行われました。
コンピュータ・シミュレーション(CAE)では「有限要素法」という技術を用います。これは自動車などの工場製品の解析に使われる技術をヴァイオリンに適用したものです。全体を細かくメッシュに分割し、部分ごとに計算してすべてを統合することで、ヴァイオリンの音色を計算するのです。
コンピュータの計算で音色をより正確に再現
現在、シミュレーションの精度を上げることが課題です。従来は、材料は完全に接着されているという前提で計算が行われていましたが、実際の接着の強度は弱いことがわかりました。そこで、「ニカワを使った板の接着の状態」を正確に計算に加味したところ、精度が上がり、実験データにより近い結果が得られました。
このようにシミュレーションの精度を上げていき、工場での加工に生かせれば、職人が作ったヴァイオリンの音色に近づいていくと考えられます。また、この技術がほかの楽器にも応用できると期待されています。
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帝京大学 理工学部 総合理工学科 機械・航空宇宙コース 教授 黒沢 良夫 先生
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