ゼリーと物理学で放射線治療の精度を高める

放射線治療に欠かせない「試し打ち」
がんの放射線治療では、患者に放射線を照射する前に、計画通りの形で放射線が当たるかを確認する「試し打ち」が欠かせません。具体的には、人体の代わりに検出器に放射線を当てて、精度を確認します。
現在、検出器として使われているのは、小さな半導体センサを約1cm間隔で並べた装置です。1cm四方の中で実際に測定しているのはわずか1mm程度なので、計測誤差が大きく、より安定して計測誤差が小さい検出器の開発が期待されています。
色が変わるゼリーで精密測定
こうした限界を克服する技術として研究が進んでいるのが「色素ゲル線量計」です。これは、放射線を当てると色が濃くなる物質をゼラチンで固めたゼリー状の検出器です。放射線が当たった様子が三次元の色の変化として現れ、光学CTで読み出すことで、放射線の形を精密に記録できるようになります。まだ開発途上の技術ですが、放射線治療の品質検証を大きく変える可能性を秘めています。
ただし、ゲル線量計の撮影には、円柱形のゲルを空気中で撮影すると、光が屈折して画像がゆがんでしまうという難題があります。多くの研究グループは、砂糖水を入れた大水槽にゲルを沈め、屈折率を合わせることで対処していますが、液体の重さやそれを扱う煩わしさは現場の負担になっています。
光学計算でゆがみを正す
これに対し、高校物理でおなじみのスネルの法則を三次元空間に拡張して、屈折を計算で補正する研究が進められています。三次元の複雑な光の進み方や波長の違いを計算して画像を補正して、水槽も液体も不要となる、より手軽で高精度な測定をめざしています。また、ゲル線量計のわずかな位置ずれによって精度が大きく左右されますが、これも計算で補正しようとしています。
放射線治療の事前検証には、ほかにも患者の呼吸による病変部の移動にどう対応するかといったさまざまな課題があります。こうした課題に対しても、装置やAIではなく、基礎科学に基づくアルゴリズムで解決しようとする研究が進められています。
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