AIの構造予測で、日本酒のコクの謎に迫る!

タンパク質の構造解析で食や薬が変わる
「タンパク質は生命活動の主役」といわれています。コラーゲンやアクチン、アミラーゼなど、生物の教科書に登場するタンパク質も、それぞれ決まった形をしています。タンパク質の凸凹にほかの分子がピッタリと収まることで、分子の結合や切断といった反応が起こるのです。そのため、タンパク質の働きを知るには、その形を知る必要があります。例えば医薬品の開発なら、ある病気に関わるタンパク質の形がわかれば、その働きを阻害する分子を作って、病気の進行を抑える薬にできるのです。
「苦味」は毒にもコクにもなる
タンパク質研究は食品の開発にも重要です。福島県は日本酒の名産地で、おいしいお酒をたくさん造っています。実はこの日本酒には、米の「グルテリン」というタンパク質が分解されてできた、苦味のあるペプチドが少量含まれています。飲んで苦味を感じるほどではありませんが、この苦味ペプチドを取り除くと、日本酒独特の味の深みやコクまで失われてしまいます。
多くの動物にとって、苦味は食べ物に毒や腐敗物が含まれているサインです。一方、人間はビールやコーヒーなど苦味のあるものを嗜好(しこう)品として味わってきました。人間には、苦味を「危険なもの」としてだけでなく、「おいしいもの」として受け止める、ほかの動物とは少し異なる仕組みがあるのかもしれません。
苦味受容体の構造を予測する
人間の舌では、どの苦味受容体が苦味ペプチドを受け取っているのでしょうか。現在、AIによる構造予測技術を使った研究が進められています。人の遺伝子情報にある苦味受容体の候補の中から、苦味ペプチドと結合しそうなものを絞り込む方法です。
これまでの予測では、1つの苦味ペプチドが複数の受容体と結合していると推定されています。逆に、1つの受容体が、配列の異なる複数の苦味ペプチドを受け入れているとも推定されています。人が日本酒のコクを感じるとき、このような複雑で多様な仕組みが関わっている可能性があります。
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