気温が1℃上がると社会に何が起こる? 経済学×データで未来を創る

気候変動対策立案のために
地球温暖化や異常気象が世界各地で深刻な問題となっており、国家レベルでの対策が求められています。限られた資源の中で最も効果的な施策を選ぶためには、気候変動が経済や社会にどのような影響を与えるのかを正確に把握することが不可欠です。しかし、単純にデータを見ただけでは、その変化が気候変動によるものなのかが判断できません。ある地域で30年前と現在を比較して、気温上昇と状況の悪化に相関関係があっても、因果関係があるとは限らないからです。
因果関係を明らかにする
そこで役立つのが、経済統計や気象データ、衛星データを用いた統計分析や、計量経済学の手法を用いた因果推論です。現地のデータを活用した実証分析により、気候変動による影響が国や地域、所得層によって大きく異なり、同じ気温上昇でも先進国よりも途上国の方が受けやすい被害があることもわかってきました。その理由は、気候変動の影響を受けやすい農業が主要産業であることや、多くの途上国はもともと地理的に暑い地域に位置していること、インフラの未整備などにあります。そのほかにも、気候変動が、紛争や社会不安、メンタルヘルスにまで影響を及ぼすことも明らかになっています。
施策を評価し、未来につなげる
このような因果推論に基づくことで、施策の影響評価が行えます。具体的な例としては、世界銀行などの支援を受けて実施された、エチオピアの大規模な土地管理プログラムの影響検証が挙げられます。衛星画像データを用いた過去の分析から、この施策が土地の生産性を高めるとともに、気候変動や干ばつに対するレジリエンス(強靭性)を強化するうえで有効であることが明らかになりました。この研究で開発された、衛星データを活用して土地の生産性を推定する手法は、世界各地で応用可能で、今後の施策評価にも役立ちます。
近年、証拠に基づく政策立案(EBPM)が重視されるようになってきました。統計学や計量経済学に基づく環境経済学は、気候変動の課題において、EBPMの礎となっているのです。
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