捨てていた皮が宝の山に カカオ豆から健康と美容の種を見つける

捨てていた皮が宝の山に カカオ豆から健康と美容の種を見つける

高カカオチョコレート大ヒットの裏側

チョコレートの原料であるカカオ豆には、健康や美容に関係するさまざまな成分が含まれています。以前から広く知られているポリフェノール以外に、近年、カカオ豆のタンパク質に便通を改善する作用があることが確認されました。このタンパク質は消化されずに大腸まで届き、「長寿菌」と呼ばれる酪酸菌を増やし、酪酸菌の作用で便通を改善することがわかったのです。この発見をきっかけに、カカオタンパク質をたくさん含む高カカオチョコレートが大ヒットしました。現在は、カカオタンパク質の摂取が大腸がんなどの予防につながるかどうかを確かめる研究が進んでいます。

肌のうるおいを守る新発見

チョコレートを作る際、カカオ豆の皮は捨てられていました。ところがこの皮に、肌のうるおいを保つ美容成分セラミドが通常の植物の10倍も含まれていることが発見されました。この発見を可能にしたのは、セラミドの正確な定量分析と光学異性体の分離技術の開発でした。
セラミドは人の肌にもともとある成分で、水分の蒸発を防ぎ、肌のうるおいを保っています。年を取るとセラミド層が薄くなり、肌がカサカサになってしまいます。そのため、化粧品にはセラミドが配合されていますが、天然のセラミドは微量しか取れないため高価であり、多くは化学合成品が使われています。カカオ豆の皮から安価に天然セラミドを抽出できるようになったことで、2025年9月にはこの天然セラミド「カカオセラミド」を添加したチョコレートが商品化されました。

研究が世界を変える可能性

カカオ豆は赤道直下の経済的に豊かでない国を中心に生産されており、カカオ豆の皮に価値が生まれることで、これらの国々の経済を支援することにつながります。また、廃棄物を再利用するサステナブルな取り組みとして、環境保護にも貢献しています。
大学での基礎的な研究の成果が、企業との協力によって実際の商品に結びつき、社会に還元されることが、人の体や社会、そして地球にもやさしい未来を創っていくのです。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 理工学部 総合理工学科 環境バイオテクノロジーコース 教授 古賀 仁一郎 先生

帝京大学 理工学部 総合理工学科 環境バイオテクノロジーコース 教授 古賀 仁一郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

食品科学、農芸化学、栄養学

先生が目指すSDGs

メッセージ

研究で一番重要なのは、情熱を持って取り組むことです。チョコレートの原料であるカカオ豆のタンパク質もセラミドも、本学の学生たちが情熱を傾けて取り組んだからこそ生まれた発見です。研究には、興味さえあれば誰でも新発見ができるという醍醐味(だいごみ)があります。あなたには、偏差値で大学を決めるのではなく、まず自分が本当にやりたいことを早く見つけてほしいです。好きな分野に没頭すれば、将来、世界を動かすような大発見ができる可能性があります。「これがやりたい!」と思えるものをぜひ探してください。

先生への質問

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帝京大学に関心を持ったあなたは

帝京大学 宇都宮キャンパスは栃木県宇都宮市の北西部の高台にあるキャンパスで、理工学部の4学科(機械・精密システム工学科、航空宇宙工学科、情報電子工学科、バイオサイエンス学科)をはじめとして、医療技術学部柔道整復学科、経済学部地域経済学科が開設され現在は文系・医療系・理工系を擁するミニ総合キャンパスとなっております。それぞれの学問領域で交流を図りながら各分野のスペシャリストとして、将来、さまざまな分野の核として、地域に貢献できる人材を育成します。