ハンナ・アーレントの「公共性」から見る理想の世界、現実の世界

ハンナ・アーレントの「公共性」から見る理想の世界、現実の世界

ハンナ・アーレントを知っていますか

ハンナ・アーレントは『全体主義の起源』や『エルサレムのアイヒマン』などの著書で知られる、20世紀の政治哲学者で思想家です。ドイツ系ユダヤ人だったためにナチス政権下で祖国を追われ、米国に逃れました。さまざまなことに「なぜ」と言葉で問い続け、ナチスの経験から政治や社会、とくに「公共性」についても論じています。アーレントの言う公共性とは、多様な人々にとっての共通の関心ごとを指し、言葉や行為によって対等に意見を交わすことで成立します。そして、その言葉と行為があらゆる人に開かれ見聞きされる「公開性」も意味します。例えば「公共事業」なら、どんな事業・サービスが望ましいかを、公の場で人々が対話することで、より良いものを作り上げるという発想がつくられてきます。

理想と現実のはざま

しかし、実際に対話によってどんな物事をも円満に解決に導くのは、簡単ではありません。かえって良くない方に向かうことも珍しくありませんし、現代のSNSの世界でも意見の違うグループが話し合い、対立が深まってしまうなど、よくあることです。こうした対話の難しさこそ、アーレントが問い続けた現実だったのです。指摘として、複数の異なる意見を持つグループの中で、一つが極端に力を持ち始め、他の意見を持つことが許されないような空気感ができてしまうと問題になると語っています。

アーレントが嫌った社会学こそが実は重要!?

そのような社会では、なるべくたくさんのグループが一つの考えに偏らず、バランスを取って共存していくのが望ましいと、アーレントは説いています。しかしこれも現実にはなかなか困難です。
社会に起こるすべてを、アーレントの言葉だけで語りきることは難しいかもしれません。彼女はそうした困った社会も、それを分析する社会学も嫌ってきました。これは彼女の強みでもあり、弱みでもあるのではないでしょうか。だからこそ社会学をもって社会をつかむことで、アーレントの考えを受け継ぎながら、新たに見えてくるものがあるはずです。

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先生情報 / 大学情報

大正大学 人間学部 人間科学科 准教授 河合 恭平 先生

大正大学 人間学部 人間科学科 准教授 河合 恭平 先生

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社会学理論、社会思想史、公共哲学

メッセージ

誰にでも関心ごとがあると思います。あなたにはぜひ、そうした関心ごとをどんどん突き詰めて、本気でやり遂げてほしいです。一方で、1つの関心を追うことで見えづらくなることも出てきます。たとえば、文系に関心を持つことで、理系への関心がおろそかになることがあります。あなたの関心によって見えづらくなる部分を無視しないでください。視野を広げ、メインの関心ごとに加えて、まずはほんの少しでもよいのでそちらに意識を向けてみましょう。やがてそれが自分の関心ごとの糧になり、他者との違うあなただけの強みになるはずです。

大正大学に関心を持ったあなたは

大正大学は大正15(1926)年に設立された、2026年に100周年を迎える伝統のある大学です。6学部10学科の学問分野で文学や心理、歴史、メディアなど、多彩な学びを展開し、地域社会に貢献できる人材を目指します。キャンパスは東京都豊島区にあり、池袋・巣鴨からもアクセスしやすい立地です。全学部が4年間を同じキャンパスで過ごします。また、1学年約1200名の学生に対し、教員は154名。教員1人あたりの1学年の学生数が7.8名と、教員との距離が非常に近いことも特徴です。