「翻訳」と「英文和訳」は、実は全くの別物!

「翻訳」と「英文和訳」は、実は全くの別物!

翻訳学は翻訳の仕方を考えるだけではない

日本は翻訳大国と言われます。古代の漢籍からはじまって、外国語で書かれたさまざまな書籍が日本語に翻訳されて読まれてきました。この翻訳という行為は、英語テストの英文和訳とは全くの別ものです。語彙(ごい)や文法の理解度を採点してもらうための英文和訳とは違って、翻訳は本の内容を読者に伝えるために行われます。そして、その際にはどうしても翻訳者個人の解釈だけでなく、翻訳者を取り巻く文化や社会情勢といった要素も翻訳される文章に影響を与えます。翻訳学では、そうした翻訳を取り巻く社会的な問題も研究対象です。

翻訳での受け入れ方はさまざま

翻訳を行うとき、原文をそのまま翻訳しただけでは理解できないことがあります。例えば明治初期にシェイクスピアの戯曲『ハムレット』が初めて翻訳されたとき、西洋文化になじみのなかった日本人読者にはあまり理解されず、その後、登場人物の名前や設定が日本化され、ハムレット王子は葉叢丸(はむらまる)という日本人になじみのある武士としてアレンジされるようになりました。また海外でも人気の作家・村上春樹の小説も、その国に合わせたアレンジがなされています。作中のこの部分は読者に合わないから必要ないと編集者に判断された部分は、ばっさりと切り落とされていることがあるのです。

異文化接触の最前線

原文こそ最も大事とする立場からは、翻訳の際に文章が変わることは受け入れ難いかもしれません。しかし見方を変えれば、文化に合わせた変化をすることによって、作品は多様性を獲得し異文化圏にまで広がっていくと捉えることもできます。また、作品を翻訳する際にどのような変化が起きているのかを知ることは、異文化について理解を深めるとともに、日本の文化を改めて知ることにもつながります。
異なる文化が接触する最前線で行われているのが翻訳という営みです。交通網や通信網の発達によって異文化がさらに身近になった現代社会では、翻訳に関する知見はより重要なものとなってきています。

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札幌大学 地域共創学群 外国語学系 教授 佐藤 美希 先生

札幌大学 地域共創学群 外国語学系 教授 佐藤 美希 先生

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翻訳学、比較文学、英語文学、日本文学

メッセージ

英語はもちろん大切ですが、外国語をどれだけ学んでも母語以上のレベルに達することはないので、まずは基礎となる自身の母語をよく学んで磨きましょう。そのためにはたくさんの本を読んで、「美しいな」「好きだな」と思える文章を見つけてください。受験や将来について考えてナーバスになるときもあるでしょうが、高校から大学、大学から就職と進むにつれて、あなたの世界はどんどん枝分かれして広がっていきます。自分の好きなもの、興味のあるものに向かって臆せずに進んでいってください。

札幌大学に関心を持ったあなたは

札幌大学では、学群制を導入し8つの専攻(専門分野)を有しています。当制度では、各専攻の専門知識を深めることはもちろん、自分の専攻以外の専門分野も幅広く学ぶことができます。更に、専攻を入学後(2年次)に選べる・変えられるレイターマッチング制度があるので、学修を進めるうえで興味・関心や新しい発見に対応できる教育システムです。
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