社会を少しずつ変えてゆく想像力

社会を少しずつ変えてゆく想像力

自分たちの社会を問い直す

私たちは、自分の属する社会のあり方が、一般的な形だと思いがちです。文化人類学では、別の社会や文化、制度や習慣などをフィールドワークして調べ、違いを浮き彫りにします。そこから自分たちや社会のあり方を考察し、新たな視点を得ることで、自社会の課題に別の角度から取り組むこともできます。違いは国ごとにあるだけではなく、例えば、会社や病院、学校などの集団間にも見つかります。その根本に「人間とは何か」という問いがあるので、身近にあるさまざまなテーマが研究対象になるのです。

社会的想像力

私たちが何かを「一般的」だと思うのは、社会に浸透して当たり前になった想像力によるものです。人との関わり方や協力の仕方なども、この「社会的想像力」に支えられています。私たちは、こちらがお辞儀をしたら相手もお辞儀をしてくれる、お祝いを渡したら何らかのお返しがくると想定して振る舞っていて、それが「よい」ことだとされます。社会的想像力は、私たちの頭の中にあるだけではありません。例えば、病院で治療を受ける際などの説明と同意の手続き(インフォームドコンセント)は、個人の選択をよいものとする想像力が制度化されたものです。

インドの家事労働

「家事は主婦の仕事」といったジェンダー観も、社会的想像力の産物です。日本では家事を妻がするのか夫がするのかが問題になりますが、この枠組みは世界共通ではありません。例えば、インドの中間層の家庭では、家事は細分化されていて、メイドと呼ばれる家事労働者が担うのが一般的です。メイドたちは各家を回り、皿洗いや床掃除などのタスクを短時間で行います。主婦はメイドの仕事を管理します。メイドたちは口約束などのインフォーマルな雇用ですが、月給制で働いています。家事は家庭内に閉じておらず、地域の社会・経済関係に広がっています。家事という一課題をとっても、ジェンダーなどの理論と、インドなど異なる社会の事例を合わせて考察することで、今とは違う社会のあり方を想像することができるでしょう。

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広島大学 総合科学部 国際共創学科 准教授 田口 陽子 先生

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文化人類学

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メッセージ

人類学は、人間って何だろうと考えます。これまでどのように変化してきて、これからどのように変われるのかを問う学問でもあります。文化人類学では、異なる文化や社会の具体例から、人間の関係性やあり方を考えます。驚くような事例を通して、自分たちが普通だと思っていることが、別の社会や文化では普通ではないことを学びます。こうして違うあり方を学ぶことで、自分たちがこうするしかないと思っている事柄も、やり方や制度などを少しずつ変えていけるかもしれません。理論とフィールドワークを通して、一緒に考えてみませんか?

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広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、4研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。