昆虫の飛行:カタチが生み出す巧みな動き

動きのしくみに見る進化の妙
チョウやハエ、カブトムシなどの昆虫は、翅(はね)を動かして空を自在に飛び回ることができます。これらの昆虫は、どのように翅を動かしているのでしょうか。
ヒトや鳥、コウモリなどの脊椎動物が「内骨格」を持つのに対し、昆虫は体が「外骨格」で覆われています。鳥などの翼は腕や指の骨に由来しますが、昆虫の多くは「外骨格の変形」という独自の駆動方法を持っています。同じ「飛行」という目的に対して、進化的な起源の違いから異なるアプローチが生まれた点に、着目されています。
「やわらかさ」を武器にする
昆虫も私たちと同じく骨格筋で体を動かします。筋肉は能動的に「収縮」しますが「伸長」はできないため、往復運動には拮抗する筋肉のペアが必要です。ヒトであれば上腕二頭筋と三頭筋が交互に収縮することで、腕を曲げ伸ばしできます。
では、外骨格の変形はどのように羽ばたきにつながるのでしょうか。麻酔したセミの胸部背側を指で押すと、翅が持ち上がります。胸部背側の外骨格(背板)が、テコの支点を介して翅を動かしているのです。ここでは、体を前後方向と背腹方向に変形させる筋肉が、体全体を伸縮させるように作用しています。硬い殻である外骨格に適度な「やわらかさ」があることで、伸縮の力を翅の上下運動へ変換できるのです。このしくみは、エネルギーを体の「ばね」に蓄えて再利用できるため、非常に効率が良いと考えられています。
飛行のコツは「手の抜き方」?
羽ばたきには、神経系による「能動的な」制御だけでなく、体の構造や「やわらかさ」といった受動的な性質が深く関係します。受動的な性質の利用は、エネルギーを要する能動的制御の負荷を減らします。この「手の抜き方」こそ、昆虫が進化の過程で獲得した飛行のコツかもしれません。 こうした能動・受動のバランスは、昆虫の飛行に限らずヒトの歩行にも存在します。「手の抜き方」を明らかにすることで、多様な環境へ適応できるだけでなく、生物特有のしなやかで自然な動きが実現するでしょう。
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