明朝の滅亡は「政治的腐敗」だけが原因だったのか~中国文書学序説~

明朝の滅亡は「政治的腐敗」だけが原因だったのか~中国文書学序説~

衝撃的だった明清交替

17世紀半ば、中国で起こった明清交替は日本にも伝わり、大きな衝撃を与えました。明朝は漢民族、清朝は満洲族です。その頃の日本は江戸時代初期にあたり、学問や政治のベースは明朝の政治思想である儒教思想にありました。しかも明朝は、満洲族に対して時に威圧し、時には懐柔しながらうまく服従させていました。中華は文明であり、その周縁は野蛮であり、「文明が野蛮を支配する」という価値観は、儒学思想とともに東アジア世界に浸透していたのでした。
明清交替、それは当時の日本人にとっては、いわば文明が野蛮に飲み込まれたように感じたでしょう。しかし、例えば「キングダム」で有名になった秦朝も遊牧民族の影響を受けた周縁の勢力であったものが、中華を征服してしまいました。中国では時折こうしたことが起こるのです。

優秀な皇帝が陥る悲劇

明朝の滅亡は政治的腐敗が原因とされていますが、最後の皇帝である崇禎帝は秀才でした。しかし、それゆえに自分の首を絞めたところもあります。優秀な皇帝といえば秦の始皇帝もそうですが、始皇帝には李斯という極めて有能な宰相がいて、中華統一を成し遂げました。ところが崇禎帝は孤独でした。思いつく限りの手を打って国家の立て直しを図ろうとしましたが、朝令暮改の繰り返しで却って混迷が深まり、最期は自害に追い込まれました。

地球が寒くなると?

一方、明朝の盛衰に影響を与えた可能性があるのが環境です。13世紀、世界を支配したモンゴル帝国の衰退は、地球の寒冷化による飢饉(ききん)と黒死病のパンデミックがきっかけでした。その後、少し暖かくなった時期に中国では明朝が最盛期を迎えますが、再び寒冷化したところで勢いを失い、やがて明朝の将軍である呉三桂が満洲族を迎え入れます。同時代的な文書・史料の解読により、医療や農生産の変化に注目しつつ、環境と政治の関連性を解き明かせば、新たな歴史像が見えてくる可能性があります。

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弘前大学 人文社会科学部 国際社会講座 教授 荷見 守義 先生

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歴史学、中国史学

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メッセージ

物事を長い尺度でとらえる目を養いましょう。世界中の争乱の原因は生活苦ですが、その裏ではエネルギーや食糧、環境にまつわる出来事が互いに絡み合い、日々変化もします。そうした問題の解決には、大局的な目で対策を図ることが必要なのです。このためには語学力も大事です。言語が違えば思想や感受性も異なり、言語の数だけ違う世界があります。言い換えれば、外国語学習を通して物事を複数の価値観から見られるようになります。大局観と複数の価値観とを併せ持つことで、ビジネスや政治など、さまざまな仕事に役立つはずです。

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