豊かな文化を語り継いだ沖縄の児童文学 戦禍の大人たちの思い

複雑な歴史の中で続いた営み
かつて琉球王国だった沖縄は、明治時代に日本へ編入され、太平洋戦争では激しい地上戦の舞台になりました。戦後は米軍の統治下に置かれ、1972年に本土復帰を果たしたものの、その後も米軍基地が残り続けるなど、複雑な歴史をたどっています。そんな中でも、沖縄の文化を子どもたちに手渡してきた大人たちがいました。民話や昔話を記録し、物語を書き、雑誌をつくる、という営みが途絶えることなく続いていたのです。
文化を子どもたちに伝えたい
沖縄には民話、民謡、わらべ歌など、豊かな口承文学の伝統があり、「語りの文化」が根付いていました。その土壌の上に、沖縄学の父と呼ばれる伊波普猷(いはふゆう)が図書館を建て、子ども会を開いて物語を語り聞かせました。子ども時代にそれを聞いていた世代は戦後、子ども向け雑誌『青い鳥』を立ち上げました。「沖縄には豊かな文化があると子どもたちに伝えたい」という大人の思いは、時代を越えて受け継がれたのです。
占領下で本土の本や雑誌が手に入りにくかった時代には、作家の瀬底ちずえが89編にわたる「琉球昔話」を米軍プロパガンダ誌『守礼の光』に掲載しました。雑誌は無料で配布され、子どもたちが楽しめる貴重な読み物であったと考えられますが、掲載媒体については評価が分かれています。本土復帰前後には、版画家・儀間比呂志の作品をはじめ、戦争・平和をテーマにした児童文学も生まれました。
沖縄児童文学の水脈をたどる
資料は沖縄戦で失われたものも多く、海外に散逸したものもあります。台湾には、台湾総督府が置かれた時代に教師や文化人として活動した沖縄の人々の記録が残されており、調査が続いています。手がかりを一つ一つたぐり寄せて調査を重ねると、歴史に埋もれていた書き手や作品が少しずつ姿を現しました。沖縄には児童文学がないと言われてきましたが、見えていなかっただけです。足跡をたどっていくと、沖縄の中では見えなかった「東アジアの中の沖縄」という新たな歴史の姿も浮かび上がってくるでしょう。
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関西学院大学 教育学部 教育学科 幼児教育学コース 教授 齋木 喜美子 先生
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