海のない長野に残る「塩丸イカ」 身近な食から地域の文化を探る

海のない長野に残る「塩丸イカ」 身近な食から地域の文化を探る

海なし県の郷土料理「塩丸イカ」

長野県には「塩丸イカ」という郷土料理があります。ゆでたスルメイカをたっぷりの食塩に漬け込んだ保存食で、日本海産のイカは山を越えて運ばれ、海から遠い内陸部で貴重なタンパク源として親しまれてきました。明治維新を描いた島崎藤村の『夜明け前』にも登場します。冷蔵技術が発達し生のイカが手に入る現代でも愛されており、スーパーでも売られています。近年は学校給食の献立にも取り入れられ、郷土の味として改めて注目されています。
一方で、こうした食文化の担い手が高齢化し、伝承が途絶えかねない現実もあります。塩丸イカもかつては長野県以外でも愛されていましたが、現在は生産量の約9割が長野県内で消費されており、ほかの地域では売ろうとしても売れないと言われています。

塩丸イカが開く歴史と暮らしへの扉

地域の食文化研究として塩丸イカを深く調べていくと、上手に塩を抜いて旬の夏野菜と和える家庭ごとの知恵や、塩を抜いて切るだけで食べられる手軽さから急な来客のもてなしにも用いられていたこと、お盆のごちそうとして食卓に並べる風習などが見えてきます。さらに、シロウリのかす漬けを取り出した後の酒かすに塩イカを漬け直すリメイク料理もあり、食材を無駄にしない工夫が幾重にも重ねられてきたこともわかります。

食文化を次の世代へつなぐ

また、長野県には「ひだみ」と呼ばれるどんぐりの食文化がありますが、これを受け継ぐ人もほぼいなくなりました。そこで近年、大学生が地域の高齢者からどんぐりの加工法を学び、それを地元の小学生に伝える活動が始まっています。どんぐりの粉はあんこにも餅にもなるので、子どもたちと一緒に団子を作って食べます。一緒に作り、一緒に食べる体験が世代を超えた交流を生み出しています。どんぐりを食べることは、食料自給率の向上にもつながるかもしれません。
食は誰もが毎日関わるものです。身近な食への関心を深めることが、私たちの日常にも新しい発見をもたらしてくれるはずです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

長野県立大学 健康発達学部 食健康学科 教授 中澤 弥子 先生

長野県立大学 健康発達学部 食健康学科 教授 中澤 弥子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

調理科学、食文化研究、食育

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は子どもの頃から食文化に興味がありましたが、大学には食文化を専門に指導してくれる先生がおらず、卒業研究でも修士課程や博士課程でも直接学ぶことはできませんでした。代わりに実験や社会調査などを幅広く経験し、35歳を過ぎてからようやく食文化研究を本格的に始めました。それでも回り道で身につけたことは今の研究にしっかり生きています。あなたもすぐに一生をかけてやりたい仕事を見つけなければと焦る必要はありません。出会ったことに全力で取り組む内に、少しずつ本当にやりたいことに近づいていくと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

長野県立大学に関心を持ったあなたは

長野県立大学は、2018年4月に長野市に開学した県立大学です。
グローバルな視野を持って未来を切り拓き、イノベーションを起こし、新たな価値を創出する”地域のリーダー”となる人材を育成しています。
グローバルマネジメント学部(グローバルマネジメント学科)と健康発達学部(食健康学科、こども学科)の2学部3学科を置いています。大学の特長としては、1年次全寮制、2年次全員参加海外プログラム、少人数教育があげられ、3~4年次にはアクティブラーニングで専門分野の知識を深めます。